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2006.11.18

ホットヨガ(二十二回目)

 この週末は、ガンモが職場の人たちと泊まりで鳥取までカニを食べに行くことになっていた。確か、去年は十二月の初めにこのイベントがあり、ガンモの鳥取行きに合わせて、私も鳥取県倉吉市のホテルに宿を取り、初めて三朝温泉を訪れたのだった。今回も、去年と同じように、三朝温泉に行こうかとも考えたのだが、数日後に出掛けることになっている北京行きの準備もまだ終わっていないことから、私は一人で家に残ることにしたのである。

 午前中、私は歯医者の予約を入れていたので、ガンモをベッドに残して歯医者に出掛けた。特に虫歯があるわけではないのだが、二、三ヶ月に一回の割合でケアしていただいているのである。歯医者から帰ると、ガンモがベッドの中で目を覚ましていた。さて、このあとの予定だが、実は、ガンモが鳥取に出掛けると言うので、私も何か旅行気分を味わえないものかと、いつもは三宮店で受けているホットヨガのレッスンを、京都四条通店で受けてみようと予約を入れてみたのだ。

 私は慌しく支度を整えると、まだベッドの中で暖かい布団にくるまれているガンモの上に覆いかぶさり、そっと抱きしめた。私は、ガンモが暖かい布団に包まって、幸せそうな顔をしているのを見ると、たまらない気持ちになる。
「ガーン(ガンモの愛称)、ガーン。おいしいカニ、たくさん食べて来い」
と言いながら、私はガンモに優しくキスをして、家を出た。

 以前から私は、ホットヨガ全店のスタンプを集めたいと思っていた。ホットヨガでは、レッスンを受ける度に、回数券にスタンプを押してもらえる。私がこれまでに通った神戸店と三宮店のスタンプの色は、それぞれ異なっている。ラジオ体操の出席カードのように、色とりどりのスタンプが貯まって行くのが楽しくて、私はこの回数券を色とりどりのスタンプで埋め尽くしたいと考えていたのだった。そして、ガンモが鳥取に行くなら、私もいつもとは違う雰囲気でホットヨガのレッスンを受けてみようと思ったのである。

 我が家から京都に出掛けて行くには、二つのルートがある。JRを利用するルートと、阪急電車を利用するルートだ。JRを利用すると、当然、JR京都駅に着く。ここは、東京で言うと、東京駅周辺に該当するだろうか。一方、阪急電車を利用すると、JR京都駅からは少し離れたところにある繁華街の河原町周辺に着く。東京で言うと、新宿や渋谷といったところだろうか。ホットヨガのスタジオは、JR京都駅前にもあるし、河原町周辺にもある。しかし、レッスンを受けたあとに、映画を観るのが最近のお楽しみコースの定番になっていたので、京都駅店よりも、大きな映画館のある河原町三条に近い京都四条通店のほうが便利だと思っていた。

 そこで私は、普段はあまり利用することのない阪急電車に乗り、ホットヨガの京都四条通店に近い烏丸(からすま)へと向かった。我が家から烏丸までは、特急電車を使うと一時間くらいだろうか。自宅から目的地までの所要時間を合わせると、多めに見て一時間半くらいである。私の普段の通勤時間とほとんど変わらない。

 レッスン開始は十三時からの予定だったが、烏丸に着いたのは十二時前だった。烏丸駅を降りて、Webで確認した出口から地上に出てみると、ホットヨガのスタジオが入っているビルがあった。レッスン開始まであと一時間もある。着替えの時間を考慮するとしても、少なくなくともあと三十分はぶらぶらできる。私は、京都の街を歩き始めた。

 京都の街は碁盤の目のようになっているため、わかりやすいと言われている。しかし、私は、方向音痴ではないと自負しているのだが、河原町周辺に来ると、いつも迷ってしまう。阪急の河原町と烏丸の駅は、歩いてわずか数分の距離なのだが、その中間に立つと、どちらに歩けば河原町なのか、あるいは、烏丸なのか、いつも迷ってしまうのだ。おそらくだが、碁盤の目のように整備されているために、かえって東西南北の感覚が麻痺してしまうのだと思う。途中でいびつな形をした通路でもあれば、それが東西南北を確定する目印になるのだ。

 少し散歩をして時間を潰したあと、私はいよいよホットヨガのスタジオに入った。そこは、ホットヨガのスタジオがあるようなビルではなく、むしろ、平日に稼動しているような会社が集まっていそうなビルだった。受付で回数券を提示し、ロッカーの鍵とタオルを受け取った。前回、水素水を買って調子が良かったので、今回も水素水を買って、レッスンの開始前と後に飲んだ。受付で、京都四条店を利用するのが初めてであることを伝えると、スタッフの女性が更衣室まで案内してくれた。

 一言で言って、京都四条通店は広い! Aスタジオ、Bスタジオ、Cスタジオと、スタジオが三つもある。神戸店も三宮店も、スタジオは二つしかない。更に、更衣室も広い。さすが、大都市京都である。更衣室に案内してくださったれスタッフにお礼を言い、着替えを済ませてスタジオに入ると、またしても驚いた。スタジオの大きさは、神戸店や三宮店とそれほど変わらないのだが、ヨガマットが三列に敷かれているのである。神戸店や三宮店は、横幅が広いのか、二列に敷かれている。私は、いつもとは違う雰囲気を楽しみながら、真ん中の列の空いているヨガマットを選んだ。

 実は、今回受けるレッスンは、九十分のベーシックコースだった。六十分のビギナーコースを自主的に卒業してからは、三宮店で七十五分のベーシックコースや同じく七十五分のアクティヴコースを受けて来たが、九十分のレッスンは初めてである。自分の身体がどのような反応を示すのか、また、用意した水で足りるのか、未知数の部分もあったが、私は期待に胸を膨らませながらレッスンが始まるのを待っていた。

 レッスン開始時間になり、スタジオに現れたインストラクターを見て、私は何だかぐっと込み上げて来るものを感じた。自分でも良くわからないのだが、そのインストラクターが、これまで関わって来たインストラクターとは違うということをスピリチュアルな部分で感じ取ったのだと思う。そのインストラクターは、呼吸法の教え方からして、これまでレッスンを受けて来たインストラクターとは異なっていた。ホットヨガを開始するときは、ウォーミングアップのためにいくつかのストレッチを行うのだが、そのときの説明が、丸暗記ではなく、まるでヨガの物語を聞かせてもらっているような不思議な展開だったのである。

 私は、彼女の説明を決して聞き漏らすまいと必死に耳を傾けていた。しかし、具体的に、彼女がどのような言葉を使ったのか、ここで伝えることができない。言葉でもなく、表現でもなく、一体何だろう。ヨガに対する根本的な姿勢のようなものに感動したのかもしれない。彼女は、
「九十分のコースを受けるのが初めての方、いらっしゃいますか?」
と尋ねてくださった。私は手を上げた。他にも、手を上げた方がいらっしゃったようだ。彼女は、そんな私たちの不安を取り除くかのように、
「九十分のベーシックコースは、六十分のビギナーコースで取って来たポーズとほとんど変わりはありません。ただ、ポーズを取る時間が多少長くなっていることと、新しいポーズがほんの少し含まれているくらいです。初めて取るポーズもあるかと思いますが、最初からきれいなポーズが取れる人もいませんので、自分のペースを崩さずに、少しずつ慣れて行ってください」
と言ってくださった。私は安心し、この九十分、彼女に付いていこうと決心したのである。

 実際、九十分のベーシックコースは、七十五分のアクティヴコースを受けたときよりも身体に負担がなく、ごく自然な感じで終わった。レッスン開始後には二十二名ほどいた人たちは、レッスンの後半になると、半分くらいの人たちが、レッスンを中断してスタジオの外に出てしまっていた。最後までレッスンを受けたのは、私を含めておよそ半数の人たちだった。京都四条通店のレッスン表を見ると、七十五分のベーシックコースのプログラムはない。ということは、九十分では長過ぎると思っている人たちも中にはいるのかもしれない。

 九十分間、インストラクターを勤めてくださった彼女に感謝しながら、レッスンを終えた私は更衣室に向かった。心地良い疲労感に包まれながら、ゆっくりとシャワーを浴びた。およそ半数の人がレッスンの途中で出て行ったので、シャワールームは混み合っていない。広い更衣室でのびのびと着替えをしながら、私はまたここでレッスンを受けたいと強く思っていた。いつもの通勤時間と変わらない時間で京都まで来られるなら、ガンモの仕事が遅くなるときに、京都まで出掛けてくればいいのではないか。そんなことを考えていた。是非ともそうしよう。そう、心に誓って、受付に行くと、回数券を返してくれた。いつもなら、
「次回のご予約はどうなさいますか?」
と尋ねられるのだが、私が遠いところから通っているのがわかっているのか、聞かれなかった。聞かれなくても、Webで予約できるようになっているので、まったく問題はないのだが。私は、受け取った回数券を開いて、何色のスタンプが増えているのかと思いながら、スタンプの色を確認した。

 それは、三宮店と同じ緑色のスタンプだった。ここで初めて、スタンプの色が、お店によって異なっているというのは、私の勝手な思い込みによるものだったということを知ることになる。私は、京都だからきっと紫のスタンプが押されているに違いない。そんな勝手な妄想を膨らませていたというのに。スタンプの色が三宮店と同じ緑色だったので、少しがっかりしながら京都四条通店をあとにしたのだった。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m いつもと違う雰囲気でホットヨガのレッスンを受けてみました。やはり、広い更衣室はとてもリラックスできますね。切符のICカード化が進んで、阪急電車にも、普段使っているJRのICOCA(ICカード定期券)で利用できるようになったので、とても便利です。これまで、いろいろなインストラクターからレッスンを受けて来ましたが、今回のインストラクターは特に印象的でした。レッスンを受ける前から涙が出そうになったのは初めてのことでした。あの素晴らしいインストラクターにもう一度会いたいと思っても、なかなか会えないのが、ホットヨガの悲しいところですが、どうかどうかまた会えますように。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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