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2006.10.02

下積み

 文章を書くのが好きだなどと公言したからかどうかはわからないが、別のブログに以下のようなコメントをいただいた。

はじめまして
ブロガースカウトの○○と申します。

文章力のあるブログを捜していましたところ、あなたのサイトが目に留まりました。

唐突ですが、私どもの商品をあなたのブログで宣伝してもらえないでしょうか。

もしよろしければ、私達のサイトをご覧になってくださいませ。

 多くのブログは、新しいコメントが書き込まれると、メールで通知されるようになっている。そのブログも、そうした設定になっていたのだが、メールではコメントの一部しか流れて来ないため、冒頭の部分だけをメールで先に読んで、果たしてこれはスカウトなのだろうかとドキドキしていた。しかし、ブログの管理画面にアクセスしてみると、何のことはない、上記のような宣伝の書き込みだった。

 このコメントに貼り付けられていたURLを参照してみると、自分のブログに広告の記事を一つ書くと、二百円から三千円の報酬を受け取ることができると書かれていた。なるほど、そういうシステムだったのか。そう言えば、自分のブログに、自分の書きたいこととは別に、商品の広告の記事をビシバシ掲載されている人がいる。ブログの普及を利用して、いつの間にか、このようなシステムが誕生したのだろう。

 お金をもらって仕事をするとき、例えそれが自分の好きな仕事であったとしても、時には、自分が心から望まない内容の仕事を受けることもあるのかもしれない。例えば、文章を書くことが好きだからという理由でそれを仕事にするにしても、自分が書きたい分野、内容とはまったく別のものを書くこともあるのかもしれない。手っ取り早くお金を手に入れたいと思っている場合は、特に。

 しかし、私は、自分のブログの中に、自分が本当に書きたいものではない記事を埋め込もうとは思わない。それはまるで、これまでノーカット、ノーCMで流れていた映画に対し、CMを埋め込むようなものだ。いや、それ以前に、私の場合、書きたくもない記事を書こうとすると、筆が固まってしまう。おそらく、嘘をつけない性格だからだ。隠すということも苦手で、喜怒哀楽がすぐに顔に出てしまう。だから私は広告屋さんにはなれない。自分が心からお勧めしたいとは思っていないものを、あたかもその商品が素晴らしいものであるかのように、ブログに記事を書いて、人にお勧めすることはできない。

 現在、大物と言われている人たちは、過去に仕事を選り好みすることはなかったのだろうか。例えば、私の好きなアーチストは、売れない頃、デパートの屋上で、子供たちに人気のヒーローが登場するショーのあとに音楽を演奏をしていた。彼らだって、決してそのような場所での演奏を望んだわけではなかったはずだ。それでも、例えほんのわずかでも自分たちの音楽を聴いてもらえるならという気持ちでその仕事を引き受けていたのだと思う。その当時からの地道な努力が実ったのかどうかはわからないが、やがて彼らはヒット曲に恵まれるのである。

 心から望まない仕事をする時期を下積みの時期とするならば、長い間、同じ業界で活躍されている人たちは、下積み生活を大事に重ねて来られた方々であるように思う。何の下積みもなく、急激にブレークした人は、人々の記憶から消え去って行くのも早い。ということは、ブログに広告の記事を書くことも、下積み生活の一つになるのだろうか。こうした地道な下積みの活動を経ずして、プロの物書きにはなれないのだろうか。

 現在の私の仕事には、私自身の「これを創りたい!」という気持ちはほとんど生かされていない。何故なら、使う人にとって便利で、会社にとって売り上げに繋がるものを産み出すお手伝いをしているからである。もしも私が現在の技術を生かして収入を得ようとするならば、自宅でシェアウェアの開発に携わることが最も手っ取り早いのだろう。しかし、今の私には、これと言って創りたいソフトはないのだ。つまり、自分が創りたいものを創っていない現在の私は、「これ創って!」とクライアントに頼まれて仕事をしている広告屋さんと、何ら変わりはないのである。ただし、売り上げのためでなく、「この広告を創りたい! 是非とも私にこの広告を創らせてください」という情熱を持って、自らクライアントに頼み込んで創らせてもらったような広告が存在するのなら、話は別だが。

 思えば、私にはずっと、本当に好きなことを仕事にしたくないという奇妙なこだわりがあった。おそらく、好きな仕事をお金で汚したくなかったのだと思う。そういう意味で、今の仕事は、お金を受け取ることに抵抗のない仕事だったのである。

※皆さん、たくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m ここのところ、更新が遅くなってしまい、申し訳ありません。先日の講演会の刺激が強過ぎたのか、現在、気持ちがあちこちに分散しているようであります。少しずつ集まって来たバラバラのヒントが一つに繋がりかけて来ては途切れ、また繋がり、といったことの繰り返しです。再びパワーがみなぎって、「これだ!」と大手を振って断言できるだけの道が開けて来るのを静かに待ちたいと思います。

今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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