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2006.10.14

映画『記憶の棘(とげ)』

 とびっきりのラブストーリーを観たくてうずうずしている私の視界に、輪廻転生を扱った映画のポスターが飛び込んで来た。十年前に最愛の夫を亡くしてしまった未亡人の前に、かつての夫の生まれ変わりと称する十歳の少年が現れる。私は、ポスターに書かれている宣伝文句に心を躍らせ、これは、時代を超えて愛し合う男女の愛の物語に違いないと勝手に想像を膨らませた。そして、十歳の少年と未亡人の熱いラブストーリーが展開されることを期待しながら、私は映画館に入った。

 少々ネタばれになってしまうのだが、未亡人には再婚が決まった男性が居た。長いこと、夫を亡くした傷を癒やせずにいた彼女が、ようやく心を開くことができた相手である。しかし、ある日突然、十歳の男の子が彼女の前に現れ、自分はあなたの亡き夫の生まれ変わりだと言い、フィアンセとは結婚するなと忠告する。そんな十歳の少年に対し、未亡人は最初のうち、半信半疑で接している。輪廻転生のメカニズムを知っている人からすれば、この時点で、「あれれ?」と疑問を抱いてしまうことだろう。

 何故、疑問を抱いてしまうのか。この映画の中では、十歳の男の子の中にだけ、特別鮮明な記憶がある。それはそれでいいのだが、かつての夫と再会できたはずの未亡人にあるはずの、込み上げて来るような懐かしさが描写されていないからである。つまり、最初は半信半疑だった未亡人は、かつての夫の魂を感じることなく、十歳の男の子の言動により、彼をかつての夫と認識するようになるのである。また、愛し合う男女の粘着力も弱い。かつての妻を愛する記憶を持ち、転生して来たのなら、もっと、もっと情熱的に、と期待していまうのである。そんなふうに、物語全体がちょっと物足りない感じで進行し、魂の部分よりも、記憶や事実で輪廻転生の存在をアピールしようとしている。そのために、なかなか映画の中に引き込まれない状況に陥ってしまうのである。

 おそらくだが、この映画は、輪廻転生を「知識」という方面から扱った映画なのだろう。「知識」だから、「証明」が必要になってしまうのであり、最も感動的であるはずの魂の部分を使わない。だから、愛し合う男女が、魂として再会を果たしたときの喜びが表現されていないのである。魂が惹かれるというのは、事実や言動でもって証明してから惹かれるものではなく、理由もわからず、ただどうしようもなく相手に惹かれて行くものなのである。そこには、思い出せそうで思い出せないような、時空の歪みさえ現れる。また、初めて出会ったはずなのに、最初から、懐かしさと親しさが込み上げて来る存在なのである。

 もしも私が輪廻転生というテーマでこの映画の脚本を書くなら、魂の持つ記憶の部分を思い切りアピールすることだろう。例えば、生前の彼の口癖やしぐさなどを、十歳の少年の演技の中にふんだんに盛り込む。更に、十歳の少年の立場としては、再婚相手に嫉妬する存在ではなく、かつての妻の新しい人生を祝福し、見守る形で登場させる。つまり、人間の持つ、魂の部分をもっと寛大な形で表現したい。この映画では、十歳の少年は、ただただ混乱させるだけの存在として現れているように思える。彼は、言葉だけでかつての妻を愛していることを表現するのだが、もちろん、彼の魂からにじみ出て来るような愛の告白ではない。だから、映画を観ている私たちのハートに響かないのである。しかし、そのような魂からの愛の表現は、現実的には、十歳の少年の演技としては無理な話だ。

 この映画の中で唯一共感を覚えることは、十歳の少年が、前回の転生における遣り残しを達成しているところだ。それは、映画を観た人ならわかるのだが、生前の彼には、妻に対して、ある秘密があった。その秘密のために、今度は妻のことを一筋に愛する存在として生まれ変わって来たのではないかという気がしている。

 こうしたテーマは、広く一般に受け入れられるには難しいテーマだと思う。受け入れられようとして、「証明」という手段を使い、失敗した作品と言えるかもしれない。それでも、あの、どうしようもなく込み上げて来る懐かしさや親しさや、時空がぐにゃりと歪んでしまうような感覚を知っている人なら、知識や証拠で証明して行くようなテーマではないことを知っているはずだ。だからなのか、私はこういう映画を観ると、愛し合う魂が何度も何度もめぐり合うロマンを思い切り伝えたくなる。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m かなり深読みかもしれませんが、この映画は、「今を生きることが一番大切」ということを、もっとも逆説的に表現しようとしたのかもしれません。となると、この映画にとって、輪廻転生は主たるテーマではなく、「おまけ」ということになりますね。主役のニコール・キッドマンのショートヘアに影響されました。私もあんな髪型にしてみようかしら・・・・・・。

※この週末も、出掛けることが多く、掲示板のコメント返信のためになかなか時間が取れません。緑の亀になるまで、もうしばらくお時間くださいませ。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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