脱・けものみち
我が家の電話回線をひとまずアナログ回線に戻すために、NTTの人が工事にやって来ることになっていた九月二十六日火曜日、ガンモは仕事が休みだった。しかし、早朝から自宅近くの客先の仕事が入ってしまい、ガンモはなるべく早いうちに仕事を終えられるようにと、夜中に起きて客先まで出掛けて行った。私が仕事に出掛けるために目覚める頃、ガンモは仕事から帰宅し、ほとんど睡眠を取っていなかったにもかかわらず、最後の仕上げとなる片付けを始めた。前日までに、ある程度のところまでは片付けていたのだが、まだまだ胸を張って誰か家の中に案内できるような状況ではなかったからだ。それでも、NTTの人は午後からやって来ることになっていた。
私は、仕事に出掛ける準備を整えながら、ガンモの様子を見守っていた。ガンモは、玄関周辺にあった荷物を、脱衣場や浴室に、ドーンと強制的にしまい込んだ。そして、床に掃除機をかけ、壁を拭き、玄関の鏡を拭いた。ガンモは汗だくになりながら、一生懸命掃除をしていた。このときのガンモの様子を思い出すだけでも、私は思わず目頭が熱くなってしまう。
実は、そんなガンモが喜びとしていたのは、私の使っていないものを不要なものとして捨ててしまうことだった。一緒に掃除をしていると、
「まるみのバッグやら、バッグやら、バッグやらが一番多い」
と言った。しかし、実際のところ、我が家で最も場所を取っているのは、これまでガンモがオークションなどで買い集めて来た古いパソコンやプリンタなのだ。何しろ、我が家には、数十台のパソコンとプリンタが揃っている。リビングや寝室には入り切らないので、トイレにまでパソコンがあるのだ。それなのに、場所を取っているのは私のバッグだなどとガンモは言う。
私が仕事に出掛けようとすると、ガンモは、
「ゴミ捨てて来て」
と私に言った。見ると、玄関の外に、大きなゴミ袋がある。
「何を捨てたの?」
とガンモに尋ねてみると、ガンモは、
「いや、見ないほうがいいと思うよ。早くこれを捨てて、仕事に行って来い」
と言う。どうやらガンモは、掃除をしているうちに、私の使っていないものをたくさん見つけてゴミ袋に捨てたらしい。私がゴミ袋の中身を確認してしまうと、私が未練を感じてゴミ袋の中からそれらを救出してしまうのがわかっているので、ゴミ袋の中身を確認せずに捨てて来いと言うのだ。従順な私は、ガンモの言う通りにして、ゴミ袋の中身を確認しないまま、マンションのゴミステーションに捨てた。誰かが思い切らなければ、我が家のものはなかなか減らない。そう思ったのだ。
仕事に出掛けてからも、ガンモがNTTの工事の人をちゃんと家の中に案内できたかどうか、気になっていた。夕方の休み時間になり、「メシ、残業コール」をしてガンモに確認してみると、アナログ回線への工事は何とか無事に終了したと言う。しかし、まだまだ家が散らかっていることがあまりにも恥ずかしくて、工事の人と目を合わせられなかったそうだ。
ああ、私は、ガンモにその役を押し付けてしまったのだと思った。そう思うと、ガンモに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。早く家に帰って、ガンモにありがとうと言いたかった。
帰宅したとき、まず驚いたのは、我が家の玄関がとてもすっきりしていたことだった。何と、玄関から入ってリビングに通じる通路で、今までものに埋もれて見えなかったフローリングの床がたくさん見えているのである。私はガンモが片付けてくれた床の上をペタペタと歩いた。気持ちがいい! 私はガンモに抱きつき、何度も何度もお礼を言った。まだまだ散らかっている家の中で、NTTの工事の人に一人で対応してくれたことと、私たちの家を一生懸命片付けてくれたこと。ガンモへの感謝の気持ちでいっぱいだった。
ガンモは、
「このままじゃ、いかん」
と危機感を持っていた。そして、
「これからは、俺が片付ける」
と宣言した。それはすなわち、
「まるみのものをどんどん捨てる」
という宣言なのだ。それでもまあ、いいか、と私は思う。私が家にいないときに、ガンモが私のものをどんどん捨てて、ガンモが家にいないときに、私がガンモのものをどんどん捨てる。そうすることで、我が家はどんどん片付いて行く。私はそんな様子をイメージしてみた。
そう言えば、今回の大掃除で、ガンモはプリンタを二台処分した。ガンモとしては、かなり思い切った決断だったようである。
先日の講演会で、桐島洋子さんがこんなことをおっしゃっていた。
「人間の身体は、窓ガラスと一緒で、曇っていると、汚れているところがとてもわかりにくいんです。でも、窓ガラスをいつもきれいに磨いていると、汚れがわかりやすくなるように、身体をいつも透明にしていると、悪いところがすぐにわかるようになるんです」
と。なるほど、確かにその通りかもしれない。
作家になりたかったこと、ホットヨガではない平日のヨガに参加すること、家の中がきれいになること、身体が健康になって行くこと。私の中で、これまでお預けにしていたいろいろな宿題が急に連鎖して動き始めた。実際、誰かからアドバイスをいただいても、自分の中に危機感がなかったり、既に実践されている人たちから強い刺激を受けなければ、重い腰はなかなか上がらないものだ。今回のアナログ回線への工事で、我が家のけものみちは、
人間の通る道に変わった。そのことがとてもうれしく、早く家に帰りたい気持ちが一層募るのだった。
※皆さん、たくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 今日も更新が遅くなり、申し訳ありません。ううう、なかなかまとまった時間が取れません。(^^; ところで、電話回線をISDN回線からアナログ回線に切り替えただけで、我が家のインターネット回線は、ADSL回線相当のスピードが出るようになりました。(苦笑)これまで、我が家のインターネット接続環境が極端に遅かったのは、我が家のISDN回線が悪さをしていたようなのです。(苦笑)ということは、これから先、電話回線をADSL回線に変更して、新しいインターネット接続サービスに切り替えなくても、十分な状態になってしまったというわけです。でも、ガンモは、
「もう契約しちゃったし、新しいサービスは、一年間は解約できない」
と言っています。このような結末になろうとは、トホホであります。
そうそう、NTTの人が書いているブログで、「すごい家に工事に行った」という内容のブログを見つけた方は、私までご一報ください。
さて、今後も引き続き、記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
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