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2006.09.28

味のある伊予弁

 たまにはこんな記事もいいじゃないか。今日は、そんな気持ちで書いてみようと思う。

 私は、生まれも育ちも愛媛県である。愛媛県と言うと、道後温泉や坊ちゃん団子などを思い浮かべる方もいらっしゃると思うが、私が住んでいたのは、道後温泉のある松山市から特急列車で一時間ほど走ったところにあった。高校までを愛媛県で過ごした私にとって、松山は、近くて遠い街だったように思う。

 そんな松山の名物に、タルトという和菓子がある。松山のタルトというのは、もともとポルトガルから伝わって来たお菓子らしい。皆さんの中でのタルトというのは、洋風のお菓子というイメージが強いかもしれない。しかし、私は小さい頃から松山銘菓のタルトに慣れ親しんで来たので、タルトと言えば、和菓子だった。現在、愛媛県には、タルトを製造している会社として、一六本舗、六時屋、ハタダ、あわしま堂などがある。実は、今日の日記で取り上げたいのは、一六本舗の一六タルトである。

 私が愛媛を離れて一人暮らしを始めた頃だったと思う。一六タルトのコマーシャルに、映画監督の故・伊丹十三さんが伊予弁で登場されるようになった。伊丹さんは、愛媛のご出身ではないのだが、以前、愛媛に住んでいらっしゃったこともあり、伊予弁の達人だったのである。

 ひとたび故郷を離れてみると、故郷の言葉というものは、とても新鮮に感じられるものだ。伊予弁が公共の電波に乗って流れているのを耳にすると、私たちは普段、このような話し方をしていたのかと、自分自身を客観的に見つめ直すことができるものだ。

 私は、伊丹さんが真剣に伊予弁を話していらっしゃるそのコマーシャルの魅力にとりつかれ、一六タルトが提供しているラジオ番組を録音し、伊丹さんが出演されている様々なバリエーションのコマーシャルをカセットテープに収めた。そして、録音したカセットテープを、コマーシャルの部分だけ何度も何度も繰り返し聞いては、その内容を暗記し、友人の前で披露していた。このコマーシャル好きが高じて、コマーシャルの中で伊丹さんがしゃべっている内容を原稿にして、便箋まで作ってしまったこともある。私は良く、その便箋を使って、友人に手紙を書いていたものだった。

 先日ふと、私自身にこんな時代があったことを思い出したのだ。そして、耳で聞いて覚えたことは、時間が経ってもほとんど正確に引き出せるということに驚きを感じていた。私はこれを、何かに書き留めておいたわけではない。当時、手作りした便箋も既になくなってしまっている。それなのに、好きで好きで何度も繰り返し聞いた伊丹さんのコマーシャルは、音として、今も私の中に残っている。

 というわけで、今日は、私が記憶しているいくつかのコマーシャルをここでご紹介したいのだ。本当は、このコマーシャルを音声で皆さんに聞いていただきたかったと思う。私が伊予弁でしゃべってもいいのだが、少々恥ずかしいし、それ以前に、音声を公開するとなると、我が家の機材では少々手間がかかってしまう。ということで、文章でお楽しみいただけたらと思う。一部、記憶が不鮮明な部分もあるが、どうかお許しいただきたい。

■その1
 
こんながお前方の嫁かや。
いよいよ色が白いじゃないか。
色が白いは七難隠すっちゅうが、こんなの場合は、七難も八難も隠しとるぞよ。

我が松山、我が一六タルト

■その2

おい、タルトを一切れ持ってこんかな。
何をしよんぞ、もう切れとるけん、一枚はぐるだけでええんじゃが。
ああああ、あらかましいねや。
ほがいな、お前、タルトがめげてしまいよるがね。

もうええ。
わしがするけれ、お前はもう一生、タルトにはまがられん。

我が松山、我が一六タルト

■その3

(冒頭の部分を忘れてしまった)
まあ、泣かいでもよかろがね。
ほうかや、兄ちゃんらにはせだにせられたんか。
ほう、よだれくりじゃのゆうたんか。
ほりゃ兄ちゃんが悪い。
兄ちゃんのほうがよわみそじゃ。

よしよし、おいさんがタルトをやるけれ、
もうお泣きな。

我が松山、我が一六タルト

■その4

もんたかや。まあ、一六のタルトでもお上がりや。
ほて、成績はどうじゃったんぞ。
どべかや。
ほらお前がのぶそうなけんよ。
つばえてぎりおったんじゃろうが。
残念なねやあ。
もう残念からげるぞよ。
まあせえ出して一六のタルトでも食べることよ。

我が松山、我が一六タルト

■その5

切ったら「の」の字になっとる、あれ、何じゃったかいのう。
何じゃったかいのう。

(そう言いながら、伊丹さんが、バスの中で一生懸命悩んでいる。
 これがもう、おかしくておかしくて。
 思わず、「おじさん、それはタルトだよ」と言いたくなってしまうのだ。
 このコマーシャルは、唯一、映像で見ていたコマーシャルである)

我が松山、我が一六タルト

 以上が、私が記憶している一六タルトの伊丹さんバージョンであるが、伊予弁で表現されている内容が、一体何を意味しているのかは、ご想像にお任せすることにしよう。

※皆さん、たくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 映画などで、方言が採用されることも多いかと思いますが、さすがにネイティヴにはかないませんよね。そう言えば、少し前に観た『紙屋悦子の青春』は、すべて九州弁で成り立っていました。ネイティヴ九州人であるはずの原田知世ちゃんまでが、ネイティヴでないように映って見えたのがとても不思議でした。もしも伊丹さんが生きていらっしゃったら、全部伊予弁の映画を作ってくださったかもしれないのにと思うと、少し残念です。伊予弁は、本当に味がありますよ。

さて、今後も引き続き、記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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