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2006.09.08

道は分かれても

 今週は、仕事がとても忙しかった。残業をする日は、いつも社員食堂でご飯を食べている。そのため、ガンモには、
「メシ、残業」
の合言葉で電話を掛けている。「メシ、残業」は、「ご飯を食べて、残業するよ」という意味だ。来週半ばから、私たちの作成したプログラムを東京に持って行き、実機で動作させてテストを行うため、その準備に忙しかったのだ。しかも、毎度のように、直前になって、大切なことがバタバタと決まる。これは社風なのか、他の人たちに影響がある部分を後回しにする癖がある。

 仕事を終えてガンモに電話を掛けてみると、ガンモもそろそろ上がると言う。お腹が空いたので、私が三宮に移動するまでの間に、どこかでご飯を食べるそうだ。私は、もたもたしていて三宮に到着するのが予定よりも遅くなってしまった。ガンモは、時間をつぶしながら、私の到着を待っていてくれた。三宮に着いて、再びガンモに電話を掛けてみると、ガンモは駅のホームに居ると言う。私は、ガンモのいるホームへと急いだのだが、どうしたことか、ホームが人で溢れかえっている。電車も数分程度の遅れが出ている。何かあったらしい。

 そこへ、ちょうど、新快速電車が入線して来た。私はガンモに電話を掛けた。
「どこに居るの?」
と尋ねると、
「先頭」
と言う。
「先頭?」
そう言いながら、私は人で溢れかえったホームを見渡した。私が立っているのは、ガンモのいる場所とは反対方向の最後尾だった。これだけの人を掻き分けて、最後尾からガンモのいる先頭まで移動するのは、並大抵のことではない。それよりも私は、今、来たばかりの新快速電車に乗ってしまいたい。仕事が忙しくて、せかせかしていたのだろうか。人で溢れ返ったホームから離れたかった。私はガンモに、
「今、来てる新快速電車に乗るから」
と言った。すると、ガンモは、
「俺は普通で行く」
と言った。どうやら、ガンモの立っている先頭付近は、新快速電車に乗る人で混雑しているようだった。混雑した電車に乗るくらいなら、空いている普通電車に乗って帰りたいとガンモは思ったようだ。私は、
「じゃあ、芦屋(三宮駅を出た新快速電車が最初に止まる駅。新快速電車を利用するとき、私たちはいつもここで降りて、普通列車に乗り換えている)で会おう」
と言って、新快速電車に飛び乗った。私が立っていた最後尾は、新快速電車の車両はそれほど混雑していなかったのである。

 私は、新快速電車の中で、「夫婦なのに、何で同じ電車に乗って帰らないのだろう」と思いながら、自分に腹を立てていた。五分ほど走ると、電車は途中の芦屋駅に到着した。ここで待っていれば、ガンモが乗った普通電車がやって来るはずである。私はそう思って、芦屋駅のホームの先頭方向に向かって歩こうとした。すると、ホームにアナウンスが流れた。

 「神戸駅の線路内に人が立ち入ったため、安全の確認を行っております。そのため、上下線とも、列車に遅れが出ております」
ガンモに電話を掛けてみると、ガンモはまだ三ノ宮駅のホームにいると言う。何かトラブルがあり、私が乗った新快速電車が発車してから、運転を見合わせているのだそうだ。私は、神戸駅の線路内に人が立ち入ったらしいことをガンモに伝えた。

 結局、私は芦屋駅で十五分ほど待つことになってしまった。いつもなら、新快速電車を降りると、隣のホームで待っている普通電車に乗り換えできるのである。しかし、芦屋駅に着いても隣のホームに普通電車は待っていなかったし、電車もなかなか来なかった。ガンモのいる三ノ宮駅でも電車が動いていないのだから、無理もない。

 しばらく待って、ようやく快速電車がやって来た。ガンモはそれには乗っていなかった。ガンモは、快速電車の数分後にやって来た普通電車に乗っていた。先頭車両をのぞくと、ガンモは、落ち着いた様子で、北京のガイドブックを読んでいた。
「北京に行くの?」
と私は尋ねた。
「うん」
と、ガンモはにこっと笑いながら答えた。ガンモは人に影響されやすく、鉄道関係のブログで交流している人が北京に行って来た話を聞いて、自分も行きたくなったらしい。
「万里の長城に、長城(カメラの名前)を持って行こう!」
などと、一人で盛り上がっている。

 北京はともかく、私たちは不思議な縁で結ばれていると思う。三ノ宮駅で道が分かれても、電車が来ないために、私は一人では帰宅することができなかった。しかし、あれだけホームに人が溢れ返っていた状況で、どのような選択をすれば一番良かったのだろう。ガンモは、人が溢れて来たために、ホームの先頭に移動した。一方、最後部に近い場所のエスカレータでホームに上がった私は、比較的空いていた最後部から新快速電車に乗った。ここで、二人の道はいったん分かれた。しかし、その後、電車が止まり、二人は分かれたままにはならなかった。普通電車に乗り換えて最寄駅まで到着した私たちは、いつものように一緒に自転車を走らせ、帰宅したのだった。

※いつも応援クリックしてくださっている皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m 今日はこんな記事を書いてみましたが、芦屋駅に着いて、普通電車が待っていなかったとしても、私はガンモの乗った普通電車が到着するのをじっと待っていたと思います。(笑)だから、外的な要因も内的な要因も、私たちには関係ないのですが、何となく、記事を運命的に書いてみたかったのでした。

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