« 日立の樹と日光浴 | トップページ | My husband »

2006.08.09

スターオブホノルル号のクルージング

 ハワイで過ごすのも残すところあと一泊となってしまった五日目の今日は、午前中から、ある説明会に参加した。なかなか面白い体験だったのだが、これについて書き始めると、今日一日の出来事がとても長くなってしまうので、この説明会については、後日書かせていただくことにしよう。

 さて、ハワイで過ごす最後の夜を特別なものにするため、私たちはスターオブホノルル号のクルージングという現地ツアーの予約を入れていた。このツアーは、スターオブホノルル号という船の中でディナーを楽しむというものである。

 現地ツアーを申し込んだときに聞いた説明によれば、指定された時間にホテル近くの集合場所で待っていれば、送迎バスが迎えに来てくれると言う。きっとまた、日本人観光客ばかりなのだろうと思い込んでいたのだが、待ち合わせ場所に着いてみると、私たちの他には日本人観光客は誰もいなかった。送迎バスは、私たちを含む十人を乗せて、スターオブホノルル号の停泊する場所に向かって走り始めた。

 私たちは、送迎バスの一番後ろの席を陣取ったのだが、後ろから見ていると、実に不思議な光景だった。送迎バスと言っても、日本で言うところのバンに相当するタイプの車だった。まったく見知らぬ異国の方たちと、同じバンに乗り合わせているという不思議、というよりも、偶然を実感せざるをえなかった。この日のスターオブホノルル号に乗るという計画を立てた上に、宿泊ホテルが近くなければ、決して出会うことのなかった人たちかもしれない。しかも、これからの人生で、二度と会うことのない確率が非常に高い人たちでもある。何もこうした状況でなくても、出会いの一つ一つを大切にしなければならないはずなのに、私たちは誰とも言葉を交わすことなく、じっと、後ろの席で他の国の人たちの様子をうかがっていた。中には、バンの隣同士の席で挨拶を交わし始める人たちも居た。私たちもその中に混ざりたいと思ったが、自分から話しかけるのは何となく気が引けていたのだった。ああ、やっぱり私たちは日本人だ。

 目的地に着き、送迎バスを降りると、すぐにスターオブホノルル号の船内に案内された。私たちは、テーブルを挟んで向かい合わせに座った。私の左手には、同じ送迎バスに乗って来た若いカップルが座っていた。四人用のテーブルだったが、私たちの隣には誰も来なかった。私の右隣のテーブルには、インド人らしいご家族が座った。船内を見渡してみると、やはり、日本人観光客はほとんど居ない。おそらくだが、日本人観光客は全体の一割にも満たなかったのではないだろうか。

 テーブルに落ち着いてしばらくすると、デジタルカメラを持った女性が写真撮影にやって来た。
「良かったら、あとでこの写真を22$で買ってください」
と言う。彼女は、映画『ティム・バートンのコープスブライド』に出て来たコープスブライドに笑えるほどそっくりの女性だった。

 飲み物のオーダーを聞かれたので、私たちはチチとブルーハワイを注文した。どちらもトロピカルな冷たい飲み物だった。私は、どちらかと言うと温かい飲み物を飲みたかったが、せっかくクルージングに来たのだからと思い、冷たい飲み物を覚悟して飲んだ。

 それから少しずつ料理が運び込まれ、生ギターの演奏と生歌のショー、いくつかのポリネシア系の踊りなどが次々に披露され、船内はとてもにぎやかになった。

 実は、ハワイには、先日、自分で取っ手を縫い付けたばかりの手提げカバンを持って来ていた。この手提げカバンは、インドの文字が書き込まれたインド製の布バックだった。ガンモは、私の右隣に座っていたインド人のご家族の反応が見たくて、わざわざそのバッグを彼らの視界に入る場所に置いた。ガンモの話によれば、そのとき、彼らの様子が変わったのがわかったらしい。

 しばらくすると、彼らと話をする機会に恵まれ、
「そのバッグはどこで買ったの?」
と尋ねられた。私は、
「日本のインターネットショップで買いました」
と答えた。私はガンモに、
「隣にインドの方が座るとわかっていたら、いつもホットヨガに着て行っているインドの神様Tシャツを着て来るんだった」
と言って残念がった。そうすれば、少なくとも彼らとは話がはずんだのに、と思ったのだ。そのとき私たちは、ハワイでは正装に当たるアロハシャツを着ていたのだ。

 一方、私たちの左隣のテーブルでは、
"Nice to meet you."
などと言いながら、友好の握手が取り交わされていた。外国映画では良く見る光景だが、よもや、自分の目の前でそのようなことが行われようとは思いもしなかった。私にも
"Nice to meet you."
と声を掛けて欲しいと思ったが、誰も声を掛けてくれなかったので、私はガンモに右手を差し出して、
"Nice to meet you."
と言った。ガンモもそれに習って、
"Nice to meet you."
と言iいながら手を差し出した。ああ、私たちはどうしてこんなにもピュアな日本人なのだろう。

 しばらくすると、夕日が沈みかけているのが見えて来た。ガンモはすかさず甲板に出て写真を撮っていたが、私がもたもたしているうちに、夕日は沈んでしまった。夕日が沈むと、まるで素早くバトンタッチが行われたかのように、すぐに大きな月が、太陽が沈んだ方向とは反対側に現れた。月は私たちの間近に迫っていた。ハワイは、月との距離が近いのだろうか。あんな大きな月を、日本では見たことがなかった。

 そのうち、生演奏の人たちが中心になり、踊りを促し始めた。更に乗客に向けて、
「記念日の方はいらっしゃいますか? 新婚さんはいらっしゃいますか? お誕生日の人はいらっしゃいますか?」
と質問した。私はすぐに、
「私たちは結婚十周年だ」
と思ったが、自分から名乗りを挙げて前に出て行くのが恥ずかしくて、黙っていた。ああ、私たちはどうしてこんなにもシャイな日本人なのだろう。日本に居るときは、自分が日本人であることを忘れてしまうくらい日本人離れしているつもりだったのに、ハワイに来て初めて、自分が日本人であることを実感してしまうとは、皮肉なものである。

 やがてスターオブホノルル号は、出発地点まで戻り、静かに着岸した。船を降りると、送迎バスが停車している場所まで歩いた。帰りは、行きよりも大きな観光バスタイプの送迎バスでホテル近くまで送ってもらった。私たちの乗ったバスには、日本人観光客は誰も乗っていなかった。

 異国の方たちと大した会話もできないままに、ハワイ最後の夜が終わろうとしていることが、残念で仕方がなかった。と言っても、もう少しハワイに留まりたい気持ちがあるわけではない。日本を離れて早五日。このままハワイに残っても、特別やりたいことがあるわけではなかった。それでも、何か寂しいような、不完全燃焼のような感覚に襲われていたのだった。

 そんな私の気持ちを察してか、ガンモは、
「また来るから」
と言った。私が、
「うん」
と言うと、
「じゃあ、今回のハワイツアー最後のABCストアに行くか」
とガンモが言った。私は気を取り直し、
「うん」
と答えた。

※ハワイ滞在中、応援クリックしてくださった皆さん、本当にありがとうございます。m(__)m 皆さんからの励ましのおかげで、ハワイ滞在中も「ガンまる日記」を書き続けることができました。長い旅行記を読んでくださってありがとうございます。m(__)m これを書き上げた数時間後には飛行機に乗り、日本時間の夕方、日本に到着します。帰国してからも、しばらくは、書き足りなかったハワイのお土産話を書かせていただくことになろうかと思いますが、引き続きよろしくお願いします。

※私がいつも着ているインドのTシャツは、最近ほとんど更新していないTシャツのはなしというサイトにアップしてあります。インドTシャツに興味のある方は、どうぞご覧くださいませ。

|

« 日立の樹と日光浴 | トップページ | My husband »