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2006.08.28

ホットヨガ(九回目)

 早朝からの勤務だったガンモは、朝五時過ぎにタクシーに迎えに来てもらい、出掛けて行った。ガンモの早朝出勤は、月に一、二度の割合でスケジュールが組まれている。場所は、私の勤務先近くの客先だ。電車で移動すると一時間半ほどかかってしまうので、ガンモはいつも自家用車で高速道路を走って出勤していたのだが、実は、自家用車の三十万円のベンツが夏休み前に壊れてしまい、どうにもこうにも動かなくなってしまった。六月の初めにベンツで三朝温泉に出掛けたとき、カーナビが煙を吹いて壊れたが、壊れたカーナビとほぼ同じ型で中部地方限定の地図媒体の入ったカーナビをネットオークションで格安で落札し、従来のカーナビに付いていた全国版の地図媒体と差し替えて使っていた。しかし、今度はベンツ自身のエンジンがかからなくなってしまったのである。エンジン系統がいかれてしまったらしく、油が発火していないようである。こうした症状が走行中に発声すれば、後続の車と接触する可能性があり、非常に危険だ。これも考え方ひとつで、走行中に壊れなくて良かったと思うべきなのだろう。ガンモがタクシーに乗って仕事に出掛けて行ったのは、このような経緯であるが、ベンツは夏休み前のバタバタしている時期に壊れてしまったので、修理にも出せずにそのままになっている。

 さて、早朝出勤ということで、ガンモの仕事は早く終わるというのに、私はホットヨガの二十時半からのレッスンの予約を入れていた。ということは、レッスンを終えてスタジオを出るのは二十二時だ。こうした状況は、何となく、ホットヨガに導かれていない日であるような気もする。それに加え、仕事中、急に十八時から打ち合わせを行うという話が浮上した。ホットヨガのレッスンを予約していた私は、
「ええっ?」
と困ったような反応を示した。すると、打ち合わせに参加する別の人が、
「俺も今日は十八時頃にはここを出る」
と言ってくれた。どうやら、遠方からお偉いさん方が来られていて、親睦のために一部の人たちで飲み会が行われるらしい。私は内心、「やった!」と思った。その人が参加できないため、十八時からの打ち合わせは延期になった。

 十八時頃、私は仕事を上がった。仕事を終えてガンモに電話を掛けてみると、ガンモは自宅近くの客先に移動して仕事をしていた。そこでの仕事が終われば、今日は仕事から解放されると言う。ガンモが自宅近くで働いているときは、待ち合わせをして一緒に帰ることができないので、何となくつまらない。
「これからホットヨガに行って来るよ」
と私は言ったが、内心、とても寂しい気持ちになっていた。何だろう、この寂しさは。ご理解くださる方は少ないかもしれないが、いつも同じ意志を持っているソウルメイトが別行動を取っているときの寂しさだ。自分から望んで予約を入れたはずなのに、別行動を取ると寂しくなってしまうのだ。

 私は、腹ごしらえをして、地下鉄を乗り換え、神戸へと向かった。そして、ガンモと別行動を取っていることへの寂しさを振り切りながら、ホットヨガのスタジオに入った。確か前回は、この時間帯のレッスンではあまり汗が出なかった。果たして、今夜はどうなのだろう。

 受付で、
「今日のレッスンは、受講される方が少ないですよ」
と言われた。前回、今回と同じように二十時半のレッスンを受けたとき、この時間のレッスンがいつも混み合うのかどうか、私が尋ねたのを覚えてくださっていたのだ。そのときは、二十時半のレッスンはいつも混んでいるので、早めに予約を入れたほうがよろしいですよと言われた。しかしどうしたことか、今日のレッスンは、受付の方も驚かれるほど少ない、十人程度のレッスンだった。

 インストラクターは、若くてかわいらしい女性だった。彼女のきゃしゃな身体に見惚れ、私は自分が女性に生まれたことに喜びを感じた。自分自身も女性だから、美しいプロポーションの女性に目を向けてたとしても、決して怪しまれないからだ。しかし、どうしたら彼女のような美しいプロポーションを作り上げることができるのだろう。私は、自分自身の旅が果てしなく遠いと感じた。美しくない肉体を、どのようにして愛すればいいというのだろう。肉体が美しければ、肉体を愛することができる。しかし、それは、美しい肉体を愛するという、条件付の愛情なのか。肉体に対して無条件の愛を注ぐことは、かなり難しい。もちろん、これまでちゃんと愛してやれなかったから、醜くなってしまっているわけなのだが。

 彼女のレッスンは、他のインストラクターよりも少し速いスピードで、どんどん進んで行った。そう、一つ一つのポーズを取る時間が短いのである。それでも、内容が盛りだくさんなのか、これまであまり取ったことのない鷲のポーズも登場した。思わず、「人間は、考える鷲である」と言いたくなってしまうようなポーズだった。

 ところが、レッスンが始まって三十分を過ぎても、汗があまり出て来ない。やはり、この時間帯は身体が休息モードに入ろうとしているのかもしれない。いつもなら、顔からタラタラと汗が出て来るポーズでも、ぽつりぽつり落ちて来るといった程度である。もしかすると、ポーズを取る度に取る水分のほうが、出て行く汗よりも多いのではないだろうか。そうなると、せっかくホットヨガのレッスンを受けても、レッスン後のほうが体重が増えているなんてことになったりしないだろうか。そんな不安が頭をよぎった。

 レッスンが始まって四十五分を過ぎたあたりから、ようやくたくさんの汗が出始めたが、やはり、通常のペースには追いつくことができなかった。確か、ヨガをいつ行うのがいいかという質問に対し、午前中と答えているヨガのページがあった。午前中にヨガのレッスンを受けられれば理想的なのかもしれないが、仕事を持っているとなかなかそうは行かない。休日の午前中をホットヨガに当てられるとしても、せっかくの休日だから、できるだけのんびりしたい気持ちもある。

 それでも、人数の少ないレッスンというのは、かなり魅力的な環境だった。いつもは二十人くらいの人たちが、ところ狭しと並べられたマットの上でポーズを取っている。しかし、今夜はその半数だ。大人数の中の一人よりも、少人数の中の一人のほうがいい。インストラクターや一緒にレッスンを受けている人たちとの距離が近いからだ。それに、人数が少なかったせいか、途中で退出してしまう人の数も少なかった。人数が多いと、自由意思を主張したくなってしまうのかもしれない。

 レッスンが終わってガンモに電話を掛けてみると、早朝から仕事をしていたガンモは仮眠を取っていた。私は、ガンモを起こしてしまったことを謝ったが、もしも私がガンモと一緒に帰宅していたら、ガンモは睡眠不足を解消するための自分の時間を持つことができなかったのではないか。そんなことも思った。私は、静かに帰路についた。今後もこの時間のレッスンを受けるかどうか、じっくりと考察しながら。

※いつも応援クリックしてくださっている皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m ここのところ、あまりにもハイペースでホットヨガに通い続けて来たので、これから少しずつペースを落として行こうと思っています。しかし、二十時半からのレッスンは、とても悩みます。これからも少人数のレッスンになるなら、時間的にも何とか通える時間なので、とても魅力的ですが、汗が出にくいのはちょっと・・・・・・。それでも、十九時半からのレッスンでは、これまでにないほど汗がたくさん出ているので、もう少し、統計を取ってみたい気もしています。

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