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2006.08.10

My husband

 とうとうハワイを発つときがやって来た。ホテルで朝食を取ったあと、十一時のチェックアウトタイムまでゆったりとくつろいだ。スーツケースに荷物をまとめ、ベランダから見える最後の景色を写真に収めた。次にこの景色を目にすることができるのはいつのことだろう。そう思うと、何だかこみ上げて来るものがあった。

 十一時少し前に、お世話になった部屋を出てフロントへと向かった。部屋を出て行くときに部屋を振り返ると、たまらず涙が出て来た。ガンモと二人で五泊したこの部屋。ダブルベッドとシングルベッドがあったが、私たちはダブルベッドだけを使っていた。毎日、外に出掛けて行くときは、お世話になっているルーム係の人にチップを置いて行った。室内に設置されているコーヒーメーカーを有効活用するために、ガンモがコーヒーとフィルターを買って来た。このコーヒーは、LIONコーヒーのようにとても甘い香りのするコーヒーで、コーヒー党でない私でも、お砂糖を入れずにミルクを入れて飲むだけでも十分おいしく飲むことができた。私たちはタンスの中に下着類をしまい込み、まるで自分の家のように生活していた。その部屋と、とうとうお別れするのだ。私は、目に涙を浮かべながら、部屋に「ありがとう」と言った。またここに戻って来られますようにと願いを込めながら。

 フロントに降りて行くと、チェックアウトタイムとあって、フロントはひどく混み合っていた。電話の料金のことでフロント係の人ともめているアメリカ人女性がいる。彼女にとっては、身に覚えのない請求らしい。ガンモの話では、こうしたことは、他のホテルでも良くあることなのだそうだ。フロント係の人が彼女の対応に追われているため、チェックアウトにひどく時間がかかってしまった。十一時二十分には旅行会社の用意してくれた送迎バスが、ホテルまで迎えに来てくれることになっていたのだが、予定よりも早く、十一時五分過ぎに送迎バスが到着してしまった。幸い、送迎バスの中には、まだ誰も乗っていないようだったが、送迎バスの運転手さんをひどく待たせてしまったので、彼に待たせたことへの詫びを言うと、気にしなくていいと言ってくれた。

 送迎バスは、同じ旅行会社から参加しているツアー客をいろいろなホテルで拾ったあと、私たちをホノルル国際空港まで送ってくれた。ユーモアたっぷりのとても陽気なアメリカ人の運転手さんで、とても楽しそうに仕事をしていた。彼のように楽しく仕事をするということを、私は日本に帰ってから見習わなければと思った。

 帰りの飛行機は、比較的空いていた。行きと同じように、トイレ近くの席を確保できた。空いていたおかげで、私たちの隣には誰も座らなかった。行きと同じく、トイレに行き放題である。機内を見渡してみると、やはり、圧倒的に日本人が多い。相変わらず、飛行機の中がとても寒かったので、私はスカーフで首や肩を守った。飛行機の中で遅い昼食を取ったあと、私たちは少し眠った。目が覚めたとき、ガンモが、
「首が寒いのでバンダナをちょうだい」
と私に言った。オフィスの空調の冷たさを経験してからというもの、私は、首を守るために、大きめのバンダナを持って歩いている。あまりに寒いときは、ガンモもそれを使うことがあったのだが、行きよりも寒さが少しマシだったので、今回は大丈夫なのだろうと思い、ガンモに確認もせずに寝てしまっていたのだ。しかし、どうやらガンモは寒いと感じていたらしい。

 私は、寝ている間、ガンモが首の寒さを我慢していたのかと思うと、たまらない気持ちになった。
「ガンモ、ごめん」
そう言って、ガンモのために持っていた大き目のバンダナをガンモに渡した。ガンモはすぐにそれを自分の首に巻いた。

 そのとき、私は、ガンモに対して、
"My husband!"
と強く思った。この人が私の夫。十年間、一緒に過ごして来た夫。これからも一緒に過ごし続ける夫。私は、男女間の密な面の付き合いを体験するためにガンモと出会ったと感じた。相手がガンモだからこそ、面の付き合いが実現できている。接点の付き合いも自由で力強いけれど、私が体験したかったのは、間違いなく面の付き合いだった。帰りの飛行機の中で、私はそのことをはっきりと確信した。だから私は、面の付き合いの素晴らしさを世の中に発信し続けよう。

 飛行機の中で、短い映画を二本観た。どちらも日本語の吹き替えをイヤホンで聴くことができた。軽い夕食が出されたあと、しばらくすると、飛行機は着陸体制に入った。

 定刻よりも七分遅れだったが、私たちは無事に関西国際空港に着陸した。パイロットの皆さん、長い間、どうもありがとう。私たちの世話をしてくださったフライトアテンダントの皆さん、どうもありがとう。そう思いながら飛行機を降りると、私は、機長に直接お礼も言わずに飛行機を降りるのは何故だろうと考えていた。八時間もの間、飛行機を操縦してくれたパイロットの皆さんにお礼も言わずに帰るのは変じゃないか。ああ、そのために、私はお金を払っているのか。お金が、ありがとうの代わりなんだ。何だか腑に落ちないが、私はそう思った。

 飛行機の外に出て、私たちの口から最初に出た言葉は、
「あちぃ!」
だった。いつも、東京から新幹線に乗り、新大阪で降りると、私たちは同じ言葉を発している。それだけ、関西は蒸し暑いところなのだ。
「ハワイの涼しさが恋しい」
ハワイは涼しくて、汗をかくこともなく快適に過ごすことができた。汗をかいたとしても、ハワイの心地良い風がすぐに乾かしてくれていたのかもしれない。しかし、関西には風はない。気温も高く、ムシムシしている。一歩足を踏み出した途端、ハワイが恋しくなるなんて、それだけハワイの気候が素晴らしいということだ。

 行きと同じ関西国際空港に居るというのに、気持ちの上でも旅行者への対応についても、行きと帰りではまったく異なっていた。行きは、これから始まる旅行への期待に大きく胸を膨らませているが、機内に持ち込む、預けるにかかわらず、荷物のチェックがかなり厳しい。ペットボトルに入った液体を持ち込もうとすると、比重をチェックされる。アメリカ合衆国への入国も、指紋を取られたりと、かなり念入りに行われる。スーツケースは、いつ開けられてもいいように、鍵を掛けないでおく。そうしなければ、スーツケースの鍵を壊されてしまうのだそうだ。しかし、帰りは、実にあっけなかった。ホノルル国際空港で、靴を脱いでチェックされたくらいのものだった。日本への再入国も、実に楽ちんだった。

 キャッシュカードを使って銀行にお金を預けるときは、暗証番号は要らないが、お金を引き出すときは、暗証番号が必要になる。キャッシュカードでお金を引き出すのと預けるのとでは意味が反対になってしまうが、入国と出国でチェックの厳しさに違いがあるあることは、INとOUTのアンバランスを思い起こさせるのだった。

※いつも応援クリックしてくださっている皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m おかげ様で、無事に日本に帰り着くことができました。ヒースローでテロ未遂があったようですね。これから夏休みで海外に出掛けられる方は、機内に飲み物を持ち込めないなど、ご不便を感じられることも多いかもしれません。どうか気を引き締めて、お気をつけてお出掛けください。

※掲示板のコメントが遅れて本当にごめんなさい。余裕ができたときに書かせていただきますね。実はこれから、皆さんが呆れるほどの行程が待ち構えているのです。(苦笑)

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