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2006.06.30

続・沈黙に関する考察

 二人の派遣仲間と三宮の懐石料理屋でご飯を食べた。彼女たちが仕事の悩みを抱えているというので、私が話を聞くことになったのだ。

 同じ職場に派遣仲間がたくさんいると、一緒にご飯を食べに行くメンバーを選ぶということに関して消極的になってしまう。声を掛けなかったメンバーに対して、何だか申し訳ない気持ちになってしまうのだ。かと言って、全員に声を掛けるとなると、スケジュールの調整が困難だったり、突っ込んだ話ができなかったりする。

 今回は、私を入れて三人だけのメンバーだったので、かなり突っ込んだ話をした。何と、セックスのことにまで話が及んだのだ。派遣生活は長いほうだが、派遣仲間と一緒に食事に行って、セックスの話をしたのは初めてのことだった。私は、セックスのときは、想いがあまって涙するということを話した。他の二人は驚いていたが、セックスについて、彼女たちがどんな話を聞かせてくれたかについては、ここに書かないでおくことにしよう。

 実は、先週の金曜日も別のメンバー三人でご飯を食べに行ったのだが、同じ三人でも、メンバーが変われば雰囲気も変わるものだと思った。突っ込んだ話になる組み合わせは、それぞれの持つベクトルの向きが近いのかもしれない。

 今回集った彼女たちの悩みは、周りが忙し過ぎて仕事を与えてもらえないということと、一緒に仕事をしている人が話をしてくれないというものだった。私は、技術者として、どちらのケースの状況も理解できる。おそらく、技術系の人間と、技術系でない人間の間にできる壁のようなものだと思っている。

 仕事が本当に忙しくなると、猫の手も借りたくなるのは事実だが、手伝って欲しい内容が技術的なことである場合、技術系でない人に仕事をうまく切り出せないことがある。本来ならば、上司が仕事をかみくだいて、技術系でない人にもうまく仕事が回るようにしなければならないのだが、上司自身の仕事が大変な状況に陥ると、仕事をかみくだく人がいなくなるので、技術系でない人たちは、仕事にあぶれてしまうことになるのだ。おそらくだが、仕事をかみくだくよりも、自分たちがやってしまったほうが速いというような状況にまで陥ってしまうのではないかと思う。悩んでいる本人は、あまりにも忙し過ぎる上司に声を掛けるのが申し訳ないと言っていた。同じプロジェクトに、同じ派遣会社から来ている技術系の派遣社員がいるが、彼女と話をするのでさえ、はばかられる状態だと言う。

 そのため、次回の更新で契約を満了したいと言っていた。派遣会社の営業担当にもそのことを話し、営業担当は、私の空調の件を話してくれたのと同じ日に、彼女の要望についても企業に話してくれたらしい。
「これで改善されなければ、もう辞めたい」
と彼女は言った。私は、
「部長の耳に入ったなら、大丈夫だと思うよ」
と、部長の人間的な素晴らしさを力説した。

 一緒に仕事をしている人との会話がないという悩みについて、私は、
「技術者同士なら、当たり前のことなんだけどね」
と切り出した。プログラムの開発業務というのは、ひとたび仕様が固まってしまえば、あとはそれに向かってひたすら作り込んで、自分なりに動作確認をするという孤独なプロセスになる。仕様がはっきりとしていて、向かって行く方向が確定している以上、その間に、誰かと話をするということはほとんどない。集中して仕事をしなければならないので、周りと会話するすることもなく、ただ黙々と仕事をする。

 しかし、そのような状況に慣れていない人は、自分の抱えている作業をときどき確認して欲しいと思うらしい。話し掛けるのがいつも自分だけで、相手から話し掛けてくれないことを嘆いていた。しかも、隣の席に座っているのに、仕事の内容や相手が手伝って欲しい仕事を完了したときのお礼の言葉がメールで流れて来ると言う。
「隣の席に座っているのだから、口頭で言って欲しいこともあるんですよ。メールの文章は無機質です」
と彼女はこぼしていた。

 確かに、彼女と一緒に仕事をしている人は、普段から口数の少ない人である。彼女からすれば、もっとかまって欲しいのだろう。和気藹々とコミュニケーションを取りながら仕事をしたいのだ。ああ、何だかその気持ちもわかるが、黙っている人の気持ちもわかる。黙っているというのは、その人自身が安定している状態なのだと私は思う。ある意味、彼女に仕事を任せてしまいたい気持ちもあるのではないだろうか。

 そういう意味で、プログラムの開発業務が主体の会社においては、技術系の人間は、与えられた仕事に対して、あれこれ判断できる状況にある。しかし技術系でない人間は、与えられた仕事に関して、誰かに確認を取ることが必要になって来る。そのために、自分に仕事を与えてくれる人とのコミュニケーションは必須なのだ。そうしたコミュニケーションを重ねながら仕事を進めて行くことが、黙って仕事をしたい技術系の人間には弱いところがある。

 現在、彼女は、一緒に仕事をしている人の上司にも相談し、話し掛けてもらえないことを必死になって訴えているらしい。そのため、彼女と一緒に仕事をしている人は、部下をつけられないとまで評価されつるあるという。つまり、もしもこの先、彼女が辞めるようなことがあったら、今後、その人には部下をつけることはできないという状況にまでなりかけているらしいのだ。

 彼女の話を聞きながら、私はいつの間にか、彼女と一緒に仕事をしている人を弁護するような言葉を発していた。
「話をしてくれないことを責めるのではなく、何故、黙っているのかを理解した上で、その態度を認めてあげないと、その人は反対に、逃げ場をなくしてどんどん落ち込んで行ってしまうような気がするよ。悪いところを指摘して追い込むのではなく、逆に持ち上げてあげるの」

 現に、彼女と一緒に仕事をしている人は、部下を持つという点において、マイナス評価をつけられているのだ。そのことを、上司に指摘され、本人も知っている。その人がそこから這い上がるには、
「もっとコミュニケーションを取れ」
と上から押さえつけられるよりも、自分の良さを認めて持ち上げてくれる人との出会いが必要な気がする。しかし、私は、自分自身に向けられた沈黙でないから、このようなことが言えるだけかもしれない。私だって、沈黙が怖い人間の一人でもあるのだ。

 不思議なのは、沈黙が怖い人間と、沈黙が好きな人間が、いつもセットになって存在することだ。こういう組み合わせがいくつも存在しているということは、双方の関係において、少しずつ学ぶべきところがあるということに違いない。

※いつも応援クリックしてくださっている皆さん、ありがとうございます。m(__)m 沈黙が怖いという自分のテーマが、他の人の経験を通して見えて来ることもあるのですね。もう一つ、彼女たちには言っていませんが、仕事面において、もっと自立することも必要だと感じました。判断ができないから、判断を仰ぐのだと思います。それならば、自分で判断できるように自立すればいいのではないかとも思ったわけです。しかし、派遣社員が自分で判断できるようになるまでには、時間がかかることも事実です。いろいろな人の立場がわかるようになると、うまく行く関係というのは、バランスの取れた関係だということがわかります。

※まだまだあまり大きな声では言えませんが、数日前から玄米食を始めています。温野菜も食べるように心がけています。また、スーパーに行ったときに、他の人たちがどのような買い物をしているかにも注目しています。

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