« 足湯バトル | トップページ | 映画『シザーハンズ』 »

2006.05.19

地球の裏側

 体調が回復したので、思い切って出勤した。しかし、オフィスは相変わらず冷蔵庫のように寒かった。冷たい風はビシバシ吹き付けて来るし、デスクの下に足を置くだけで、すぐにジンジンして来る。私はジャケットを着込んで、ショールを頭からかぶり、冷風を防御していた。心の中では、「今日は特別寒い。まるで、拷問のようだ」と思っていた。

 派遣会社の営業担当がやって来たので、面談をした。営業担当は、私が毛糸の帽子をかぶり、スカーフをしているのを見て驚いていた。営業担当の話によると、水曜日に上司のまた上司に、私がオフィスの空調が寒いと感じていることを伝えてくれたらしい。上司のまた上司が私に声を掛けてくれたのは、営業担当が私の状況を話してくれたからだった。

 上司のまた上司は、営業担当に、オフィスの空調はどこかおかしく、自分もひどく寒いと感じていること、私の他にも寒い想いをしている人がいることなどを話して聞かせてくれたらしい。そして、次の席替えのときに私の席を考慮してくださることを約束してくださったそうだ。もちろん、空調がおかしいことに関しても、対策を取ってくださるらしい。私は、上司のまた上司に話をしてくれた営業担当を両手で拝みながら、厚くお礼を述べた。彼の勇気ある功績に心から感謝した。

 夕方、女子トイレで女子社員と話をしていたところ、彼女は、
「今日は特別暑かった。仕事をしているだけで、汗がだらーっと出て来た」
などと言った。私は驚いて、
「ええっ? 本当ですか? 私の席は、過去最高に寒かったですよ。まるで拷問のようでした」
と言った。

 彼女の席は、私の座っている席の隣のエリアに位置している。空調のつまみを調節すると、彼女たちのエリアにも影響する。彼女たちのエリアはとても暑いらしく、半袖で仕事をしている人たちもいる。寒いと感じて、私が空調つまみを回し、温度を上げると、彼女たちのエリアが極端に暑くなってしまうらしい。これは、いよいよ困ってしまった。

 オフィスの中で、寒さが過剰になっているエリアと、暑さが過剰になっているエリアがある。最初から軸が傾いてしまっているために、どちらかが空調のつまみを回すと、もう片方の過剰な状態が増幅されてしまう。

 暑さが過剰になっているエリアに座っている人たちは、私が寒さを防御するのと反対の行動を取りたがる。一方、私は、彼らが暑さを防御するのと反対の行動を取りたがる。地球の裏側は、ずっと遠いところにあると思っていたのだが、私のすぐ隣のエリアが地球の裏側だったとは驚きだ。

 以前、極を越えると新たな段階に入るということを、この「ガンまる日記」にも書いたことがある。地球が丸いのならば、暑さの向こう側には快適な温暖エリアが、寒さの向こう側にも快適な温暖エリアが存在するはずである。となると、暑いことが悩みの彼らも、寒いことが悩みの私も、目指すところは同じということだ。

 しかし、ひょっとすると、私よりも、暑いエリアに座っている人たちのほうが苦しいのかもしれない。何故なら、残業時間内は空調が止められて、ひどく暑くなってしまうからだ。オフィスにはたくさんのパソコンが設置されているため、膨大な熱を放っているのだ。それが、昼間はクーラーによって冷やされているが、暑いエリアに座っている人たちは、冷たい空気がやって来ないために、一日中暑いことになる。

 それにもかかわらず、暑いエリアに座っている人たちは、空調のつまみをそれほど頻繁にはいじってはいなかった。もしかすると、私がひどく寒がっているので遠慮してくれていたのかもしれない。だとすると、本当にありがたいことだ。私は、そんな中にあって、空調のつまみをあまりいじらないでくれた彼らに深く感謝したいと思うのだった。

※この機会に、昔書いた、「地球の裏側」という詩を掲載しておきましょう。

「地球の裏側」   作:まるみ  (二〇〇一年十二月)

地球の裏側はどんなかな?

表も裏もないよ。
みんな一緒だよ。

だって、私たちが裏だと思い込んでいる場所は、
そこに住んでいる人たちからすれば、
表なんだもの。

そして、私たちが住んでいる場所が、
その人たちにとっての裏側になるんだもの。

だから、裏も表もないよ。
みんな一緒だよ。

※いつも応援クリックしてくださっている皆さん、どうもありがとうございます。もしかすると今の私は、自分の立っている場所が異なる相手のことをどれだけ大切に思えるか、という学びをしているのかもしれません。もう少しで本当の学びが見えて来るような、そんな段階に入って来ました。本当の学びが何であるのかは、いつか、この極を越えられたときにわかるような気がします。今は一進一退の状況ですが、少しずつ進んでいるように思えます。

|

« 足湯バトル | トップページ | 映画『シザーハンズ』 »