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2006.04.13

国際電話

 日本時間の午後三時過ぎ、私の携帯電話が鳴った。私は勤務時間中だった。普段は、勤務時間中の携帯電話の音など聞こえて来ないのに、その電話に限って、呼び出し音がはっきり聞こえて来たのだ。勤務時間中は、携帯電話の着信音を切っているわけではないのだが、バッグの中にしまい込んでいるため、携帯電話が鳴ってもなかなか気がつかないことが多いのだ。「こんな時間に掛かって来る電話は、もしかしてワン切りかもしれない」などと思いながらも、「もしや?」という期待もあって、携帯電話を開いた。私の携帯電話は開閉型で、開くと、掛かって来た電話をすぐに着信できるように設定している。私が携帯電話を開くと、電話を掛けてきた相手の番号を確認する間もなく、電話が繋がった。

 「もしもし?」
「あ?」
受話器から聞こえて来たのは、聞き慣れた、懐かしいガンモの声だった。まぎれもなく、ガンモの声だった。私は携帯電話を持ってオフィスの外に出て、ガンモと話しをした。
「アメックスの暗証番号を設定してなかったみたいで、公衆電話でクレジットカードが使えなかった。今、硬貨で掛けてる」
とガンモが言った。日本のように、課金される度にブチブチという音が聞こえては来ないが、まるで国内で会話しているかのように鮮明だった。

 実は、はじめてのおつかいじゃないが、私はガンモに買って来て欲しいと頼んでいるものがあった。それは、日本では市販されていないが、アメリカでは普通に手に入れることのできる天然のプロゲステロンクリームだ。私のように子宮筋腫を抱えている人は、エストロゲンが過剰なので、足りていないプロゲステロンを皮膚から吸収し、補うことで症状が改善されて行くそうだ。実際、プロゲステロンの補充のおかげなのか、先日の検診において、私の最も大きな筋腫は二センチ小さくなっていた(この件に関しては、後日改めてご報告させていただくことにする)。筋腫が次第に柔らかくなって来ていたので、ある程度の予感はしていた。そういう経緯もあって、私は、そうした商品を扱っているハワイのお店の住所をプリントアウトして、ガンモに渡しておいたのだ。
「あそこは住宅街の寂しい通りだったから、行くのをやめて、他のお店で見つけて買った。ゴミ箱をあさってる人がいたし」
と言ってくれた。
「そうか、ごめんね」
と、私は謝った。私が頼んだおつかいのせいで、ガンモに何かあったら身も蓋もない。私は、ほっと胸をなで下ろした。こうして、本当に、はじめてのおつかいが実現したのである。

 「あと一泊したら帰国する」
とガンモは言って、電話を切った。久しぶりにガンモの声を聞いた私は、幸福感に包まれながら仕事に戻った。

 夜、寝る前に、ガンモからもう一度メールが入っていた。
「ようやくハワイに慣れて来たけど、まるみがいないとつまんない。今度、一緒にハワイに来るから。明日の朝、ビーチでメシ食ったら空港へ行く。明日、帰るから!」
私はそれを読んで、胸がいっぱいになった。いよいよガンモが帰国する。ガンモが帰国したら、また、シングルベッドに寄り添って眠れる。ガンモが家を歩くときのペタペタという音が聞ける。ガンモがコーヒーを飲むときのカチャカチャ音も聞ける。私たちに、再び日常が戻って来る。私は、再会の瞬間を想像しながら、眠りに就いた。

※三泊五日のハワイ旅行も終盤にさしかかり、ようやくガンモが帰国します。明日のタイトルは多分、「涙の再会」でしょう。いえ、「涙の最下位」じゃありません。いつも応援クリックしてくださっている皆さん、本当にありがとうございます。m(__)m

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