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2006.04.10

「出発済み」

 とうとうガンモの出発の日がやって来た。ガンモの出発を惜しむ私の気持ちが反映されたのか、外は本格的な雨が降っていた。午前中、私は病院に出向き、半年に一度の検診を受けた。これについては、後日改めてご報告させていただくことにする。

 いつもは一時間以上待つことになる診察も、どういうわけか順調で、わずか四十分程度の待ち時間で名前を呼ばれた。そのため、病院をあとにしたのも比較的早い時間帯だった。

 私は、その足で郵便局へと向かった。日本円をアメリカドルのトラベラーズチェックとアメリカドルの現金に換金するためである。しかし、私が出向いた、町の小さな郵便局ではそれらを取り扱っていなかったので、JR神戸駅近くの神戸中央郵便局まで改めて出向くことになった。

 窓口で、アメリカドルのトラベラーズチェックとアメリカドルの現金に換金したいと申し出ると、神戸中央郵便局といえどもあまり慣れない業務だったらしく、係員の方をあたふたさせてしまった。それでも、係員の方はとても丁寧に対応してくださり、多少の時間はかかったものの、無事に換金することができた。私の申し出に少々戸惑いながらも対応してくださる係員の方に、慣れない業務をお願いしてしまって申し訳ない気持ちになる一方で、こうした経験が、係員の方の業務経験をより豊かなものにするであろうというポジティブな面も見いだしていた。

 私は帰宅し、ガンモにアメリカドルのトラベラーズチェックとアメリカドルの現金を渡した。アメリカドルは、チップのために、1ドル札を中心に換金したのだ。ガンモは、初めて見るトラベラーズチェックをしげしげと眺めながら、トラベラーズチェックに署名していた。

 刻一刻と、ガンモの出発の時間が近づいていた。心臓が破裂しそうになるほどの非日常に、私たちはとても興奮していた。私は、ガンモと顔を合わせる度に、
「ガンモ、行くの? ハワイに行くの?」
と確認した。ガンモもかなりハイな気分になっていて、
「ワイハーに行くの」
などと答えた。更に、私に対して、まるで外人さんに話し掛けるかのごとく、
「ハーイ」
などと言った。少し前までは憂鬱な気分一色だったガンモだが、今ではハワイへの希望に満ち溢れているようだった。

 夕方五時前に、ガンモは関空に向けて出発した。
「やっぱり関空まで見送りに行きたい」
と私は言ったのだが、
「それでは約束が違う」
とガンモが私の申し出を跳ね返した。そして、普段、仕事に出掛けるのと同じように、ガンモは普通に出掛けて行ったのだ。

 関空で、ハワイで使える携帯電話をレンタルする予定だったガンモだが、関空への到着が予定よりも遅れてしまったため、携帯電話のレンタルを見送ったそうだ。ネットで調べてみると、ハワイでも、携帯電話のレンタルサービスが充実しているようである。ガンモがそのサービスを利用するかどうかはわからないが、とりあえず、連絡を取り合う手段としては、私が普段持ち歩いているのと同じタイプのPDAを持って出掛けたので、うまくすればインターネットに接続できるそうだ。有料だが、ホテルの各部屋にはインターネットに接続できるLANの口が用意されているという。

 ガンモが飛行機に乗り込む少し前まで、ガンモと携帯電話で話していたのだが、私はまだまだ実感が沸いて来なかった。ガンモの仕事が遅くなって、私が先に寝ていても、いつの間にか帰宅して、シングルベッドにすべり込むようにして寄り添って来たガンモ。ガンモが家の中を歩くとき、いつもペタペタと音がした。ミルクコーヒー好きのガンモは、コーヒーカップの中にスプーンを入れて歩き回る癖があり、コーヒーカップとスプーンの音が擦れ合って、カチャカチャ言った。例えほんの短い不在だとしても、普段、当たり前のように耳にしていたそれらの音を、しばらく聞くことができないのだ。

 ガンモが飛行機に乗り込む時間を過ぎると、私は関空のホームページを開き、フライト情報を案内するページでガンモの乗った飛行機の離陸状況をチェックした。ガンモの乗った飛行機は、離陸予定の時間をしばらく過ぎても、ステータスは「搭乗中」のままだったが、間もなく、「出発済み」のステータスに変わった。私は、それを確認して初めて、ああ、ガンモは本当にホノルルに向けて出発したのだと認識した。寂しさなのか何なのかわからないが、私はそのページを開いたまま、ひとしきり泣いた。あとは、飛行機が無事にホノルル空港に到着してくれることを祈るばかりだった。

※ガンモのハワイ行きの記事にお付き合いくださって、どうもありがとうございます。もう少し続くとは思いますが(笑)。応援クリックにも感謝しております。いつもクリックしてくださっている皆さん、本当にありがとうございます。m(__)m

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