二度あることは三度ある
納品作業は最後までバタバタしてしまい、ようやく片づいたのは二十三時前だった。職場を出てすぐにガンモに電話を掛けてみると、ガンモは飲み会に参加しているようだった。そう言えば、朝、ガンモが出掛けて行くときに、
「今夜は飲み会だから」
と言ったのを思い出した。私はケロッと忘れてしまっていたのだ。
地下鉄三宮に着いてから、もう一度ガンモに電話を掛けてみると、ガンモはまだ飲み会の席にいるようだった。私は、今夜はガンモと一緒には帰れないと思い、JR三ノ宮駅のホームに上がった。次の電車の発車案内を見ると、二十三時四十八分と表示されている。いつもは数分ごとに運行しているはずのJR神戸線だが、この時間帯になると、さすがに本数も減って来る。次の発車までおよそ十五分もあったので、私は自動販売機で温かい飲み物を買って飲んだあと、駅のホームでぼんやりと電車が到着するのを待っていた。
ようやく電車が到着したので、私はいそいそと電車に乗り込んだ。そして、自宅の最寄り駅で降りて、すぐ側にあったエレベータに乗った。私が乗ったエレベータに、慌てて滑り込んで来る人がいたのだが、私はPDAを片手に持ってネットにアクセスしていたので、意識がその人に向かなかった。しかし、視界の向こうにチラチラ映って見えている人の雰囲気が妙に懐かしい。「もしや?」と思って顔を上げてみると、やはりガンモだった。
「最近、良く会うね」
と、エレベータの中でガンモが言った。私は驚きのあまり、きょとんとしていた。ガンモは、私と電話で話をした直後に飲み会がお開きになり、JR三ノ宮駅のホームに入ったと言う。そして、いつも私がいる場所を探してみたが、私の姿が見当たらなかったので、私はもう電車に乗って帰ってしまったのだと思い込み、私が立っていたホームの向かい側のホームを歩いて、私の立っていた自動販売機のある裏側の売店付近で電車の到着を待っていたのだと言う。私も、いつもガンモを待っている場所で電車を待っていれば良かったのだが、ちょうどその辺りには飲み会帰りの大学生たちが集まっていてひどくにぎやかな様子だったので、静かな場所を選んで待っていたのだ。私が既に電車に乗ったかどうかを電話で確認すれば良かったのだろうが、ガンモは私が既に電車に乗っていると思って、電話を掛けるのを遠慮したようだ。それでも、実際は二人とも同じ電車に乗っていたのである。
実は、その前日にも、同じことが起こっている。私は納品前の残業で、ガンモはどういうわけか仕事ではまっていた。三宮に着いたときにガンモに電話を掛けてみると、良く聞き取れない状況の中で、
「もしかすると、帰りは同じくらいの時間かもしれないなあ」
とガンモが言った。私は、ガンモがどこか遠い場所で作業をしていて、新快速に乗って帰って来るものだと勘違いし、一人で快速列車に乗り、ガンモとは待ち合わせをしなかった。私たちの利用している通勤圏内の途中の駅には、快速列車と新快速列車の待ち合わせはないからだ。しかし、最寄り駅で電車を降りた途端、ガンモから電話が掛かって来たのだ。
「今、○○駅(最寄り駅)だけど?」
ガンモの掛けている電話の背景で、同じ音が聞こえてくる。
「えっ? 私も○○駅だよ。まさか、同じ快速電車に乗ってたの?」
と尋ねると、
「そう」
とガンモが言った。
私たちは本当に驚いた。お互いに仕事が忙しかったり、どちらかが飲み会だったりと、普段の帰宅時間よりも遅いはずなのに、まるで申し合わせたように最寄り駅でばったり会うことになる私たち。しかも、二人とも同じ電車に乗って帰宅しているのだ。そう言えば、つい先日も、交差点でばったり会ったばかりだ。私たちはこのような必然に、とても強い絆を感じるのだった。
昔から、「二度あることは三度ある」とは良く言ったものである。
※ようやく納品が終わり、ほっと一息ついております。いつも応援クリックしてくださっている皆さん、本当にありがとうございます。m(__)m
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