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2006.03.28

わに口クリップ

 青春18きっぷは、JR全線一日乗り放題の切符(乗車できるのは普通列車のみ。特急券分の料金を足しても、特急列車に乗車することはできない)が五枚綴りになっている。私たちはいつも二人で利用しているため、五枚綴りだと、どうしても一回分の端数が出てしまう。

 端数が出たときは、チケットショップやネットオークションなどで、奇数回分残った青春18きっぷを買い足すこともある。青春18きっぷの有効期間が差し迫って来ると、五枚綴りのチケットを消化できない人たちが、途中まで消化した青春18きっぷを売りに出すのである。そうした売買には、「返却不要」などと提示されていることがある。「返却不要」とは、文字通り、売買が成立して譲り受けた青春18きっぷを売主に返却しなくても良いという意味である。しかし、中には、青春18きっぷそのものを保管しておきたい売主もいて、他の人に譲渡したあとであっても、使用済みのチケットを返却して欲しいと申し出る場合があるのだ。

 それはさておき、そうした余り切符を手に入れることができないときや、お互いの休みが合わないときなどは、残された端数の一枚を、ガンモが平日休みを利用して、一人で一回分使うことになる。その行き先は、たいてい名古屋だ。

 今回は、ガンモのハワイ行きが控えているため、四月に入るとばたばたすることもあって、余りチケットを探して、二人で週末に出掛けるパターンからは外れることになった。そして、ガンモはまたまた平日休みを利用して、一人で名古屋に出掛けて行ったのである。

 名古屋に出掛けた私たちがウロウロするのは、決まって大須周辺の電気街である。大須周辺には古本屋さんも多い。だから、ガンモと二人で大須に出掛けるときは、自由行動時間を設けて、ガンモはパソコンショップを真剣に巡り、私は古本屋さんを真剣に巡る。そして、一人でのショップ巡りに飽きが来ると、携帯電話で連絡を取り合い、合流するのである。さて、この日もガンモは大須周辺の電気街をウロウロしていたようだった。

 実は、出掛ける前に、ガンモにモバイルカードのアンテナを見つけて来て欲しいと頼んであった。私が使用しているモバイルカードは、アンテナがすぐに取れてしまい、気づかないうちに紛失してしまうのだ。モバイルカードのアンテナを紛失してしまうと、感度が極端に悪くなり、インターネットに繋がりにくくなってしまう。かつて、モバイルカードの製造元のサイトから、専用のアンテナを取り寄せたこともあったのだが、単にアンテナだけとは言え、なかなか割高だった。そして、私は先日、またもやアンテナを紛失してしまい、ガンモに泣きついたところ、ガンモは
「よし、わかった。大須でアンテナを見つけてきてやるから」
と言って、名古屋に出掛けて行ったのだった。

 私は残業になり、名古屋帰りのガンモよりも遅く帰宅した。お風呂から上がり、そろそろベッドに入ろうとしているそのときに、ガンモに頼んだはずのモバイルカードのアンテナのことをふと思い出して、ガンモに尋ねてみた。
「ねえねえ、ガンモ。アンテナ、買って来てくれた?」
すると、ガンモは、買い物袋の中から何やら小さな包みをゴソゴソと取り出した。
「はい、これ。一個三十五円」
そう言って差し出されたのは、金属製のクリップに絶縁体のビニールがかぶせられた、とてもアンテナとは言えそうもない代物だった。その物体は、色違いのものが全部で三個揃っていた。私は驚きのあまり、目を丸くした。
「これで、感度が良くなるはずだから」
ガンモはその奇妙なクリップに、絶対の自信があるようだった。

 翌日、私はガンモの言う通り、そのクリップをアンテナ代わりに使ってみた。かつてアンテナが付いていたところにクリップを挟み込み、インターネットに接続してみたのである。すると、驚いたことに、モバイルカードの感度が極端に良くなった。ただし、見栄えはかなり恥ずかしい。これだけの説明ではなかなかイメージが沸かない方も多いと思うので、とあるネットショッピングより画像を拝借してみた。上段の一番左の画像が、ガンモの買って来てくれたクリップに最も近い。わに口クリップの画像

 これは、「わに口クリップ」と呼ばれるものだそうである。
「多分、知っている人が見たら、おかしいと思うよ」
とガンモは言った。そして、私は今、わに口クリップをアンテナ代わりに挟み込んで、「ガンまる日記」を書いている。

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