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2006.03.09

トンネル開通

 半年前に、陽作業員と陰作業員は、「よーい、ドン!」の合図でそれぞれ反対の方向からトンネルを掘り始めた。しかし、その作業は、陽作業員と陰作業員が想像していた以上に厳しかった。あまりもの土の固さに、握っていたスコップはすぐにボロボロになり、陽作業員も陰作業員も力も尽きてヘトヘトになり、トンネルを掘り進めるスピードを落としてしまった。そして、新しい年が明ける頃、とうとう手に持っていたスコップを放り投げ、しばしの休息に入った。それは、二ヶ月にも及ぶ長い休息だった。

 しかし、あるとき、第三者がトンネルの近くまでやって来て、陰作業員の地道なトンネルの堀り方にケチをつけた。通りすがりの第三者は、陰作業員のことなど何一つ知らないのに、
「ここではこんな掘り方がまかり通ってるのか!」
と、陰作業員の掘り方を避難した。たまたますぐ側でそれを見守っていた陽作業員は、それを聞いてたちまち頭に血が昇った。「一体、あんたは、陰作業員の何を知っている?」と、思わず通りすがりの第三者に口出ししたくなった。そのとき陽作業員は、これまでのらりくらりしているとしか思えなかった陰作業員のトンネルの掘り方が、いかにも陰作業員らしい掘り方だったということに気がついたのだ。掘っているのかどうかわからないような、やんわりとした陰作業員の掘り方は、陰作業員らしさを映し出していた。こうして陰作業員らしさに目を向けることができた陽作業員は、その掘り方に陰作業員の魂を感じてひしひしと涙した。どんなにわかりにくくて地道でも、陰作業員は、そうした方法でトンネルを掘り続けることを自らの喜びとしていたのだ。そのことに気がつくやいなや、陽作業員は、陰作業員の使っていたスコップを拾い上げ、陰作業員の担当している作業場で、えっさえっさとトンネルを掘り始めていた。そして、そこで新たなものを発見し、驚きの声を上げたのだった。

 そこには、小さな花がちょこんと咲いていた。作業場を見渡すと、花は全部で三つ咲いていた。あたかも、陰作業員の愛情を受けながら育っているかのように、小さくてもしゃんと咲いていた。陰作業員は、そこでトンネルを掘り進めながら、咲いている花を絶対に傷つけまいと、わざわざ花を避(よ)けながら掘っていたのだ。そのために陰作業員は、のらりくらりと回り道をしながらトンネルを掘っているように映って見えていたのである。

 陽作業員は呆然とした。やがて、どうしたことか、陽作業員の目から、あとからあとから涙が溢れて出て来た。陽作業員はこれまで、見えている範囲でしか陰作業員のことを理解しようとしていなかった。自分の見えていないものが恐ろしくて金切り声を上げ、陰作業員を何度も何度も悪者に仕立て上げた。ただ、自分が怖いだけのために。ただ、自分が受け取りたいがために。しかし、陽作業員の見えないところで陰作業員は、陰作業員の最も好む方法でトンネルを掘り進めていたのだ。陰作業員が選んだその方法には、陰作業員の魂としての生き方が投影されていた。

 陽作業員が再びスコップを手にしたときの感覚は、とても不思議なものだった。二ヶ月近くもスコップを手にしていなかったはずなのに、まるでエクセルの折り畳み機能のように、二ヶ月という歳月がしゅるしゅると縮まったのだ。そして、こうしてスコップを持ってトンネルを掘り続けるという行為が、陽作業員にとっても陰作業員にとっても、ごく当たり前のことなのだと実感した。

 これらのことをきっかけにして、陽作業員の視点は百八十度変わった。これまでの陽作業員は、「陰作業員が○○をしてくれない」という視点で陰作業員を見ていた。しかし、そうではなく、「陰作業員が○○をしてくれた」という視点に変わったのだった。ないものを探そうとするのではなく、そこにあるものに目を向け、大事にするという視点である。視点が変わった途端、いつの間にか陰作業員がスコップを手に持って立っているのが見えた。しかも、スコップを手に持った陰作業員は、これまでの陽作業員の作業場へと回り込み、黙々とトンネルを掘り始めた。トンネルが開通したのは、あっという間のことだった。トンネル開通の秘訣は、視点を変えることだったのだ。

※ようやくログインでできました! 長時間に渡るココログメンテナンス中につき、更新ができませんでした。しかし、メンテナンス終了後も、アクセスが集中したため、管理画面になかなかログインできず、またまた更新できませんでした。ココログの管理画面がバージョンアップ作業を行ったため、その影響が出ているようです。何度もアクセスしてくださった皆さん、申し訳ありませんでした。それにもかかわらず、たくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m いつもいつも感謝しています。m(__)m ようやくトンネルが開通しましたが、開通と言っても、まだほんの小さな穴が開いただけです。(^^; それでもやはり、私にとってツインソウルは、かけがえのない友人です。(^^)

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