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2006.03.24

本音と建前

 仕事帰りにガンモと三宮で待ち合わせをしたのだが、三宮に着いてガンモに電話を掛けてみると、ガンモは急な仕事が入って、これから客先に向かうと言う。

 「三十分ほどで終わるけど」
とガンモが言ったので、私は、
「じゃあ、○○○(ガンモがこれから向かう客先の最寄駅)で待ってようか?」
と言った。しかしガンモはひどく急いだ様子で、
「俺はもう、うどん食べたし、先に帰ってな」
と言った。これから客先に向かって一仕事するので、ガンモは既に腹ごしらえをしたらしい。
「そう。じゃあ、私も何か食べて帰るよ」
と言って電話を切った。

 そして、私が帰宅してくつろいでいると、ガンモから電話が掛かって来た。
「どこで待ってるの?」
とガンモが言う。
「えっ? 『帰ってな』って言われたから、もう家に帰ったよ」
と私は答えた。ガンモは唖然としていた。
「えっ? 『待ってる』って言ってなかったっけ? 電話もないし、やけにおとなしく待ってるなあと思って、それで電話したんだけど・・・・・・」
とガンモは言う。

 それを聞いた私は、思わず笑った。ガンモは確かに、「先に帰ってな」と私に言ったのだ。しかし、それは建前だった。心の中では私に待っていて欲しいと密かに思っていたのだ。それでも、私に待っていて欲しい気持ちを押し隠して、寒い中、待ち続けることになるであろう私を気遣って、「先に帰ってな」と私に言ったのだ。しかし、仕事を終えて我に返ったとき、私に待っていて欲しかった本音が、私が最初に言った「待ってようか?」とリンクしたのだ。

 この件に関して、少なくとも二つの考えが浮かぶだろう。一つは、愛する夫が三十分で終わる仕事を抱えているとき、愛する妻が先に家に帰っていたほうが、夫が仕事に集中できるだろうという考え。もう一つは、愛する妻が待ってくれているのだから、三十分かかる仕事を二十分で処理すべく、早めに切り上げて帰ろうとするパワーが沸いて来るのではないかという考え。

 何を一番に考え、その事象をどこで切り取るかによって、とらえ方は違って来る。仕事を一番に考えれば、前者の選択になるだろうし、二人で一緒にいることを一番に考えれば、後者の選択になる。

 私は、本音を言わなかったガンモが、完全に仕事モードに入っていると思って、前者を選択した。しかし、ガンモの本音は、後者の愛情モードだった。その結果、私はガンモの仕事が終わるのを家で待ち、ガンモはガンモで、私がどこかで待っていると思い違いを生み出してしまった。

 一方、私は本音を言っていたのか。確かに、「待ってようか?」とガンモに言った。それは私の本音だ。しかし、それが本音なら、例えガンモに「先に帰ってな」と言われても、しぶとく待っていれば良かったのかもしれない。

 確かに、そういう展開であれば、ガンモの仕事が終わったあとに、合流できてハッピーエンドだったはずだ。しかし、こうした擦れ違いこそが、むしろ、本音を口にすることの大切さを教えてくれているような気がするのだった。

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