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2006.02.07

パン屋の前でパーン

 仕事を終えて待ち合わせをしたガンモが、私にこんなことを言った。
「朝、電車の中からまるみにメールしようと思ってたのに、優先座席だったからメールできなかったんだけど」
「何? 何?」
「朝、通勤の途中にね、自転車の前のタイヤがパーンと言って破裂したの」
「ええっ? どういうこと?」
「どうもね、空気を入れ過ぎたみたい」

 前日の夜、ガンモは空気が抜けてしぼんでしまったタイヤに空気を入れるために、自転車をエレベータに乗せて部屋の前まで運んだ。そして、タイヤに思い切り空気を吹き込んだらしい。ところが、空気を入れ過ぎてしまったらしく、我が家から少し走ったところの交差点で、パーンと音を立ててタイヤが破裂してしまったと言う。

「○○○(有名なパン屋さんの名前)の前の交差点でパーンって言ったの」
「パン屋さんの前でパーンって言ったの?」
「そうそう」

 ガンモは仕方なく自転車を転がして自宅まで引き返し、バスに乗って出勤したと言う。たまたまゆっくり出勤できる日だったらしく、仕事に影響は出なかったそうだ。確か、ガンモのほうが私よりも後から家を出たのだった。

 ガンモは普段から、自分で自転車のメンテナンスをするのが好きだ。子供の頃に自転車屋さんにブレーキの修理をしてもらったとき、ガンモは自転車屋さんの作業を見よう見まねで覚えて、ブレーキの交換も自分でするようになった。自転車のチェーンが切れてしまったときも、近所のホームセンターで専用の工具を買って来て、四苦八苦しながら繋いだ。チェーンが外れただけではなく、切れてしまったチェーンを修復したのだ。もちろん、パンクしたタイヤも自分で修理する。タイヤに小さな穴が空いた程度なら、修理セットでささっと直してしまうが、今回のようにタイヤが破裂した場合でも、骨董市で安く買った換えのタイヤがある。

 ガンモはうれしそうに溜め息をついた。
「あああ、これで明日することが増える」
休日に働くことの多いガンモは、平日に振替の休みを取っている。あたかも溜め息をつくような素振りを見せながらも、自転車をメンテナンスできるということで、どこかうれしさがにじみ出ているガンモ。ガンモは一見、イライラするような出来事でも、こうしてすぐに喜びに変えてしまう。きっと、私が帰宅する頃には、新しいタイヤに取り替えられていることだろう。

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