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2006.02.18

樽見鉄道とうすずみ温泉

 この三月のダイヤ改正で引退する列車とお別れするため、私たちは名古屋へと向かった。途中、大垣で降りて、樽見(たるみ)鉄道を堪能し、終点の樽見から無料送迎バスに乗って、うすずみ温泉にゆったりとつかった。

 樽見鉄道は、大垣と樽見を片道およそ一時間で結ぶ一両編成のワンマンカーで、レールバス仕様の車両も運行されている。料金箱には手編みのカバーが掛けられている。ワンマンカーの料金箱は、前方と後方に一つずつ設置されているが、両方の料金箱にそれぞれ別の色の手編みのカバーが掛けられていた。私はもう、それだけでこの樽見鉄道が好きになってしまったのだ。一体誰が編んだのだろう。樽見鉄道を愛する人たちの中に、編み物の好きな女性がいるのだろうか。それとも、樽見鉄道の社員の身内の方が編んだのだろうか。カバーを編んだ人は、自分の編んだカバーが多くの人たちの目に触れながら、大事に使用されていることを見届けているのだろうか。手編みのカバーを見つけただけで、様々な想像が膨らんで来る。既成のものではなく、心のこもった手作りの優しさを感じる。

 樽見鉄道は、向かい合わせのクロスシートではなく、都会の通勤列車に見受けられるようなロングシートである。利用客は、そのロングシートがほぼ埋まるくらいのちょうどいい数だ。乗り心地も良く、窓の外にはのどかな田園風景が広がっている。

 終点の樽見に着くと、うすずみ温泉の無料送迎バスが待機していた。無料送迎バスに乗り込み、およそ十分でうすずみ温泉に到着。うすずみ温泉の入浴券は、冬季限定の樽見鉄道の一日乗車券を購入すると、セットでついて来る。普通に料金をを払うと、大人一人八百五十円だ。

 名物は、桶で作られた五右衛門風呂だ。私は、小さい頃に、父の実家で入った五右衛門風呂を思い出した。あの頃は、蓋の下に一体どれほどの深さがあるのかわからなくて怖かったが、うすずみ温泉の五右衛門風呂は、比較的浅く、安心して利用できた。ただ、桶は、プラスチックと木が混ざり合ったような材質で、昔の五右衛門風呂を知っている人からすると、少し違和感を覚えるかもしれない。それでも、入ると蓋が沈む五右衛門風呂は面白くて、何度も桶に入ってみた。

 うすずみ温泉には、露天風呂、サウナ、スチームサウナ、ジェットバス、リラックスバス、うたせ湯など、楽しい設備が揃っている。私はサウナに入り、思い切り汗をかいてみた。たくさんの汗を出して、気分爽快になり、大満足だった。ガンモも大満足だったようで、お湯の温度が低い割には温まったと喜んでいた。

 私たちは再び無料送迎バスに乗り、樽見まで戻り、更に、樽見鉄道で大垣まで戻った。帰りの列車の中で、二人の女の子を連れた二人の外国人女性に出会った。女の子の一人は小学生くらい、もう一人は幼稚園くらいだった。大人の外国人女性は、親戚か友人同士といったところだろうか。小学生くらいの女の子は、席に座っておとなしく本を読んでいたが、幼稚園くらいの女の子は、列車に設置された整理券の発券機の動きに興味があるらしく、発券機の前にずっと待機して、その動きを注意深く見守っていた。どうやら、回数券が出たり引っ込んだりする様子が面白いらしい。運転手さんも、彼女の様子に気づいていて、わざと列車のドアを閉めたりした。列車のドアが閉まると、自動的に回数券の発券も停止され、それまで飛び出していた回数券がパタンと中にしまい込まれるのだ。彼女にとっては、それが不思議でならないらしい。

 列車が発車し、それまで飛び出していた回数券が発券機の中にしまい込まれると、幼稚園の女の子はお母さんのいる席に着いた。そして、お母さんからお菓子をもらい、食べ始めたのだが、そのお菓子を、列車に乗っている全員に一つずつ配ってくれた。お菓子は、動物クッキーだった。彼女の行動で、列車に乗っていた人たち全員の表情が緩み、車内全体がにこやかな雰囲気に包まれた。彼女は、列車が停車している間に、運転手さんにも動物クッキーをあげた。そればかりでなく、運転手さんには、クレヨンで描いた自分の絵をプレゼントした。彼女の母は、彼女の行動をずっと見守っていた。日本人の母親ならば、このような娘の行動に対し、恥ずかしそうな態度を取ってしまうかもしれない。私がその幼稚園の女の子だとしたら、私の母はどのような態度を取るだろう。ひょっとすると、運転手さんには話し掛けちゃいけません、などと言うかもしれない。その時点で、子供の愛情表現は、袋小路に入ってしまうのではないだろうか。欧米人の愛情表現が豊かなのは、子供の素直な愛情表現が許容されているからだと思った。

 運転手さんは、途中の駅で、威勢のいい元気な運転手さんと交代になった。新しい運転手さんは、発車のときの掛け声がやけに大きかった。彼は、外国人の乗客がいることを意識したのか、次はどこどこに止まりますという案内を、英語でアナウンスし始めた。私たちは、こんな機転の利く元気な運転手さんに拍手を送り、ますます樽見鉄道が好きになった。

 大垣からは、JRの新快速列車に乗り換え、私たちは翌日のために名古屋に宿泊した。とても暖かい雰囲気に包まれた幸せな一日だった。

参考URL:
樽見鉄道株式会社
四季彩館 うすずみ温泉

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