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2006.01.07

愛媛県内子町と寝台特急サンライズ瀬戸

 船は、早朝に松山観光港に着いた。早い時間からベッドに入ったガンモは、私よりも早く起きて活動し始めていたが、0時過ぎにベッドに入った私は、眠くて眠くて仕方がなかった。眠い目をこすりながら下船し、路線バスと伊予鉄を乗り継いで、ひとまず松山市駅まで出た。そこから更に伊予鉄の路面電車に乗り換え、JR松山駅へと向かった。そして、JR松山駅で朝食を取ったあと、内子線経由の予讃線に乗り込んだ。目指すは、古い町並みのある内子町(うちこちょう)である。今回、愛媛県の松山に降り立ったのは、去年の十月に購入した青春18きっぷと同じ五枚綴りの四国内のフリー切符(四国再発見きっぷ)の有効期間(三ヶ月)が、そろそろ切れてしまうからだ。そのため、このフリー切符を使って、JR四国を制覇しようと計画したわけなのだ。

 愛媛県出身の私は、学生時代、東京から帰省する度に、四国ワイド周遊券を購入していた。四国ワイド周遊券は、今はもうなくなってしまったのだが、切符の有効期間中なら、四国内の特急の自由席に何度でも乗り降り自由になるという大変お得な切符だった。当時、学生で時間のたっぷりあった私は、その切符を使って、一人で四国内をあちこち旅行して回ったものだ。ガンモにそのことを言うと、
「俺も誘ってくれたら良かったのに」
などと言う。私もガンモを誘いたかったが、ガンモとは同じ四国出身なのに、その頃はまだ出会っていなかったのだから仕方がない。私は、内子町には、その当時、初めて足を運んだのだった。そして、目に焼き付けておいた内子の古い町並みをガンモにも見せたくて、私は早朝から起きて寝不足だったことも忘れてずんずん歩いた。

 およそ二十年ぶりに訪れた内子町は、古い町並みがそのまま大切に残っている町だった。内子町の素晴らしいところは、単に古い町並みが残されているばかりでなく、それらが現役の家屋として機能しているところにあった。何度も何度も修復を重ねながらも、今なお大切に使われ続けている古い家屋たち。そこに刻まれている深い年輪には、歴史の古さだけでなく、人々が守り抜いて来た相対的な関係による結晶があった。この地域に新しい家を建てたいと思った人も、中には居たかもしれない。しかし、この景観を守り抜こうと、地域の人たちが一丸となって維持し続けて来たに違いないのだ。ここに住む人たちが、そうした相対関係から外れずにいたことが、私たち観光客の心を引き付けて離さないのだった。

 古い町並みの地域では、一般家庭の玄関先に農産物が並べられ、無人のお店が開かれていた。代金は、家の中に通じる筒の容器の中に入れるのだ。値段はみかんが一袋百円と、驚くほど安い。干し柿は二つ入って二百円。こうした販売方法と価格設定から、ここに住む人たちが農産物を売って生計を立てようとしているのではなく、自分のところで食べるのに余った分を、他の人たちにも格安で分けていることがうかがえる。こうした文化の存在は、もしかすると、お金の始まりとはこういうところにあったのではないかと私たちに想像させるのだ。

 列車の時間の関係で、内子町には一時間余りしか滞在できなかったのだが、特に急ぐ必要もなく、古い町並みを散策するにはちょうどいい時間だった。

 それから私たちは、何時間も普通列車を乗り継いで、高松まで出た。そして、高松から寝台特急サンライズ瀬戸に乗り、東京とへ向かった。寝台特急サンライズ瀬戸は、寝台特急の中でも近代的な車両で、まるで狭いホテルのような寝台だった。私たちはB寝台の個室をリザーブしていたのだが、その色合いといい、機能といい、ホテルのツインルームとほとんど変わりがなかった。

 早寝早起きのサイクルが出来上がってしまっているガンモは、眠い眠いと言いながらベッドに横になり、そのまま本格的に寝入ってしまった。私はガンモから、寝台特急サンライズにはシャワールームがあり、車掌さんからシャワーカードを購入すれば利用できるということを断片的に聞かされていた。しかし、ガンモからもっと詳しいことを聞き出そうにも、ガンモは眠ってしまった。私はシャワーを浴びておきたかったので、単独で車掌室に赴き、車掌さんからシャワーカードを買った。そして、わくわくしながらシャワールームのドアを開き、シャワーカードを通してシャワーを浴びた。列車が走行しているときにシャワーを浴びると、ボディーソープの泡で滑ることがあり、スリル満点だった。部屋に帰ると、ガンモはすやすやと眠っていた。私は、ガンモよりも先に、生まれて初めて列車のシャワーを浴びたことで、ガンモに優越感を感じながらベッドに入った。翌朝、目を覚ましたガンモに自慢しようと思いながら。

この日撮影した写真:
愛媛県

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