« 人の優しさが身にしみる | トップページ | 湯治(一日目) »

2005.12.22

非センチメンタルな夜

 私にとっては今年の仕事収めの日。朝、起きてみると、雪がしんしんと降っていた。雪の中、ガンモは自転車で出掛けて行った。しかし、この雪道を自転車で出掛けて行くのは危険だと、わざわざ私に電話を掛けて来てくれた。私は、ガンモの忠告に従って、路線バスを利用することにした。しかし、待てど暮らせど、路線バスはやって来ない。すると、通りがかりの人が、
「路線バスなら運休してますよ」
と教えてくれた。私は、最寄駅までの雪道を、えっさえっさと歩いた。そのため、仕事収めの日だと言うのに、三十分以上も遅刻してしまった。

 定時過ぎに上司や一緒に仕事をしている人にあいさつをして、私は今年の仕事を終えた。実はこのあと、同じプロジェクトメンバーの派遣仲間の送別会を開くことになっていた。彼女は、今年いっぱいで現在の派遣先での仕事を終えるのだ。そこで、他の派遣仲間たちを誘って、職場近くにあるイタリアンレストランで彼女の送別会を開くことにしたのだ。メンバーは、先日まで私と激しく対立していた彼女ともう一人、それから彼女自身と私の合計四人である。

 送別会は、それほど深い話には至らなかったが、お互いの業務経歴やこれからの夢なども語り合い、なかなか面白い展開になった。かつて激しく対立していたはずの彼女とも、仕事で対立したことを笑い話にできた。

 私以外のメンバーは全員、職場に近い地下鉄沿線に住んでいる。帰りの電車の中で、一人、また一人と電車を降りて一人ぼっちになると、まるで待ちかねたように、荷物をまとめていたときに感じたあのどうしようもない孤独感に襲われ、涙が出て来た。私は、その波を受け止め、涙の流れるままに身を任せ、やがて落ち着きを取り戻した。

 三ノ宮に着いてガンモに電話を掛けてみると、ガンモも電車で最寄駅まで向かっている途中だと言う。私は、ホームに入って来た新快速電車に飛び乗り、最寄駅で待ってくれていたガンモと合流した。

 道路の一部が凍っていたので、ガンモは自転車を置いて帰ることになった。何か乗り物を利用しようと思ったが、、タクシー乗り場にもバス乗り場にもたくさんの人が並んでいたため、私たちは一緒に歩いて帰ることにした。
「二人一緒だと、寒くて長い道のりでも、楽しいよね」
と帰り道にガンモが言った。我が家は、最寄駅から徒歩で二十分以上かかってしまうのだ。ガンモは更に、
「明日からいなくなる人がいるけどね」
と付け加えた。ガンモはほんの少し、いじけているように見えた。そんなふうに、ちょっと素直じゃない自分を演じて、どこかにエネルギーを発散させているのかもしれない。私たちは、おしゃべりをしながら、自宅までの道を二人で歩いた。

 私はとうとう、明日、出発するのだ。それなのに、帰宅時間が遅かった私たちは、自分の用事に忙しかった。私はまだ完全に支度を終えたわけではなかったし、ガンモもまた、自分の書いているブログにコメントを寄せてくださっている皆さんに返信しておきたいようだった。そのおかげで、妙にセンチメンタルな気分になることを避けられたのだった。

|

« 人の優しさが身にしみる | トップページ | 湯治(一日目) »