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2005.11.12

ガンモの人生設計

 私は毎週土曜日、日曜日と祝日が休日だが、ガンモはときどき仕事のことがある。ここ二年ほどの間、特に出掛ける予定のない土曜日の午前中は、私は鍼灸医院で治療を受けている。待機メンバー(企業でトラブルが発生すると、コールセンタから呼び出しが掛かる当番)だったガンモは、急な呼び出しが入り、出掛けて行った。私が鍼灸治療から帰る頃、ガンモに電話を掛けてみると、ちょうど仕事を終えて帰宅中だと言う。そして、私がマンションに帰り、エレベータを呼び出したその瞬間、仕事を終えたガンモがマンションのエントランスに入って来た。まさしくグッドタイミングである。こうしたことが起こるのは、二人の気持ちが近いところにある証拠である。

 それから私たちは、休日の午後を自宅でのんびりと過ごした。私は、先日カットしたばかりのガンモの髪の毛がとてもかわいいので、ときどきガンモの頭を抱え込んでは、ぐりぐりした。こうして、長い時間を夫婦水入らずで過ごせるのは、とても喜ばしいことだ。

 ガンモが、
「俺たちに子供ができる夢を見た」
と言う。ガンモは夢の中で、子供が生まれるとなると、人生設計を変えなければならないと思ったらしい。
「これから子供を産んで育てるとなると、六十五歳まで働かなきゃいけなくなる。これは大変だ」
とガンモは言う。これは夢ではなく、現実のはなしだが、実際、ガンモの会社は、六十五歳まで定年が延びたそうだ。しかし、五十歳になったら、管理職以外は関連会社に出向または転籍させられ、給料は五十パーセントカット、その分、仕事は十パーセントカットになると言う。しかし、これは、「現在」の延長線上にある「未来」であって、これから少しずつ景気が回復し、少し先の「現在」が変われば、また違う「未来」を創造することができるのではないかと私は思っている。

 十二月になると、一泊二日でガンモの職場の慰安旅行があると言う。
「私は呼んでもらえないの?」
と訪ねると、
「そういう制度は、うちの会社にはないんだよね。昔はあったんだけどね」
とガンモは答える。もっと景気の良い頃は、会社主催の家族パーティーなどがクリスマスに開催されていたそうだ。しかし、今は何が何でも経費削減の時代。景気が良かった頃、今のような状況が訪れることなど、一体誰が予想し得ただろうか。そう考えると、やがて景気も上を向いて来る可能性だってある。そんな気がするこの頃である。

 「ところで、夢の中で生まれた子供は、男の子なの? 女の子なの?」
と訪ねると、
「いや、生まれたわけではなくて、まだおなかのなかに居ただけだった」
とガンモは答えた。ガンモがこんな夢を見るなんて珍しい。私でさえ、見たことがないのに。果たして、ガンモの夢は正夢になるのだろうか。もしも正夢になるのだとしたら、ガンモには、六十五歳まで働いてもらわないと困ってしまう。

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