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2005.11.16

朝令暮改プロジェクト

 「火の車になっているプロジェクトがあるので、手を貸して欲しい」
上司にそう言われたのが先週のことだった。そのプロジェクトは、C#(シーシャープ)という開発言語で開発業務を行っている。プロジェクト立ち上がり当時はまだ規模の小さなプロジェクトだったが、いつの間にか大きなプロジェクトに成長し、その都度、新たな人員を割り振って来たが、ここに来て、とうとう開発が追いつかなくなってしまったらしい。そこで、私の参加しているプロジェクトから、私の他にもう一人、助っ人としてそのプロジェクトに参加することになった。

 世界にいろいろな母国語があるのと同じように、ソフトウェア業界にも、いろいろな開発言語がある。アマチュアの人たちにも浸透しているDelphiやVISUAL BASICをはじめ、アセンブラ、C、C++、Java、C#などがある。その中でも、C#は比較的新しい言語で、私もまだそれほど使いこなせるわけではない。しかし、少しでも知っているということで、火の車のプロジェクトの助っ人として投入されたわけである。私と一緒に火の車プロジェクトに参加したもう一人の人は、C#をまったく知らない。ただ、CやC++を知っているので、何とかなるだろうという上司の判断らしい。これは、フランス語やドイツ語を知っているので、イタリア語も何とかなるだろうという感覚に近い。

 さて、そのプロジェクトだが、一部の人が朝の六時まで仕事をするような凄まじい状況になっているという。何故、そのようなことになるのか。私も参加してみてわかったのだが、とにかく、仕様がコロコロ変わるのである。まさしく、朝令暮改である。実は、そのプロジェクトは、いろいろな開発部隊が作り上げたものを部品として使っている。その部品が変われば、そのプロジェクト内のプログラムにも手を加えなければならない。そんなことが、実に数時間おきに発生している。仕様が変わりましたというメールがばんばん飛んで来る。これを、家を建てるプロセスに例えると、柱の位置や数が変わったために、既に塗り終わったはずの壁をもう一度はがして塗り直すようなものだ。これでは、全体の作業量もわからないし、一体、いつになったら終わるのかも推測できない。それにもかかわらず、プログラムの作成期限が決められている。

 しかも、このプロジェクトは、非常に新しい試みなので、私たちがこれまで蓄積して来た技術があまり役に立たない。これまで私が知らなかった技術ばかり登場する。これをチャンスと思うか、地獄と思うかは、私の向上心次第なのだろう。

 実は、プロジェクト参加二日目にして、ようやくそのプロジェクトでやっていることが見えて来た。そして、自分のペースが掴めそうだと感じた。しかし、出勤してみると、やり方を変えたいので、作り直してくださいというメールが届いている。築き上げたものが崩れた。下降と上昇の繰り返し。ああ、この感覚、何かに似ている。

追記:

 技術のことで、同じ派遣仲間と対立になってしまった。彼女は、そのプロジェクトの元からのメンバーで、そのプロジェクトに一年以上も携わり、蓄積して来たものがある。以前、「思い込み連鎖」にも書いたように、私たちの参加しているプロジェクトは非常に保守的で、古くからの製品をずっと保守し続けている。つまり、保守にパワーがかかっているため、新しいことにチャレンジできる余裕がない。しかし、今回私が送り込まれたのは、新しい試みに挑戦しているプロジェクトだった。そのため、同じC#という言語を使っていても、私たちが開発して来た製品とはまったく体系が異なっている。それは、同じ日本国内にも方言があるようなものだ。一年前の夏休みに九州に出掛けたが、鹿児島のローカル線の中で地元のおばあちゃんがしゃべっていることを理解できなかった。それと同じように、私は彼らの使っている言語の意味が理解できない。

 派遣仲間の彼女が、私に説明をするための時間をたくさんさいてくれるのだが、そのことが、プロジェクト内で問題になっているらしい。彼女が私に説明することを、私たちのチームで理解できる人はいないのかと彼女の上司が言っていると言う。私はカチンと来て、こう言ってしまった。
「確かに忙しいのはわかるけど、よそのプロジェクトのメンバーまで巻き込んで手伝ってもらっている状況なのに、そんなことを言える立場なの?」
と。彼女は、
「それは、上司が言ってることだから、私たちがここで話すことじゃない」
と言ったが、何だかもやもやした気持ちが残った。

 ああ、それにしても、忙しさというものは、ここまで人を醜くしてしまうものなのか。

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