想いが叶う
残業のため、社員職業で夕ご飯を食べることを伝えるためにガンモに電話を掛けた。電話の奥から、ガンモのがっかりした様子が伝わって来る。ガンモとはいつも、途中の駅で待ち合わせて一緒に帰っているからだ。共働きでいつも帰りの遅い私たちは、二人で待ち合わせて外食することが多い。
残業を終えて職場を出る頃、もう一度ガンモに電話を掛けてみると、ガンモは会社の後輩とお好み焼きを食べに行ったところだった。
「独身二人組でお好み焼きを食べてる」
とガンモが言う。ガンモの会社の後輩は確かに独身だったが、ガンモが自分自身をも独身の仲間に加えたのは、家に帰っても、夕ご飯の用意がないことを意味している。しかし、私たち夫婦は、そんなことをまったく気にかけてはいない。家事は女性がするものだとか、家に帰ったらあたたかいご飯が待っていなければならないといったような亭主関白的な価値観にはとらわれていないのだ。家事は二人で分担し、ガンモは主に洗濯と掃除担当、私は主に食事とコミュニケーション担当だ。自分のスーツのズボンの裾上げも、ガンモは自分で行っている。
私の職場から、ガンモのいる三宮までは一時間近くかかるので、
「じゃあ、帰りは別々になっちゃうね」
と言いながら、電話を切った。
しかし、三宮駅について再びガンモの携帯に電話を掛けてみると、受話器の向こう側からも、私がリアルタイムに耳にしている三宮駅のアナウンスが聞こえて来るではないか。
「あれ? もしかして、三宮駅のホームにいる?」
と私が言うと、
「そうだから」
とガンモは言った。特に時間を指定して待ち合わせたわけでもないのに、同じ時間に同じ駅のホームに居たのだ。
そして私たちは、涙の再会を果たし(少々大袈裟?)、同じ電車に乗り、同じ家に帰った。一緒に帰りたいという二人の想いが叶ったのだ。
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