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2005.09.29

守り抜くべき熱きもの

 ガンモの仕事が休みだったので、私は早く家に帰りたいと思っていた。しかし、仕事が少々遅れ気味だったので、残業をするために、社員食堂で夕御飯を食べた。残業をすることを伝えるためにガンモに電話を掛けると、ガンモは私が残業することに対し、少しがっかりした様子を見せた。ガンモの声を聞いて、早く家に帰りたい気持ちが一層強まった私だったが、気を取り直してオフィスに戻った。すると、いつも一緒に仕事をしている人たちの姿が見えないのだ。休憩時間だったので、休憩室で煙草でも吸っているのだろうと、そのときは思った。しかし、行き先掲示板に目をやってみて初めて、彼らが既に帰宅したということがわかった。

 遅いときは、いつも二十三時過ぎまで残業している彼らが、定時退社日でもないのに、揃ってもう帰宅してしまっている。一体、何があるのだろうと思っていたら、別のプロジェクトのメンバーが、
「今日は、阪神ファンにとっては大事な日だから、阪神ファンはみんな、甲子園球場に行きたいだろうなあ」
と話しているのが聞こえて来た。阪神ファン? そう言えば、彼らもプロ野球好きだったはず。普段、スポーツとは無縁の生活を送っている私は、プロ野球選手の名前も、球団の種類(セ・リーグ、パ・リーグの球団の分類)も、相撲の白星と黒星の違いにも疎い。だから、阪神タイガースがそのような局面を迎えていることなどまったく知らなかった。しかし、もしかするとこれは、私も帰っていいということ? と勝手に判断し、さっさと帰宅準備を整えて、帰路に就いた。

 オフィスを出てすぐに、ガンモに電話を掛けた。
「今日は、阪神タイガースが決勝戦をやってるの?」
とガンモに尋ねると、
「そうそう、巨人とね。今、阪神がリードしてるよ」
とテレビをつけているガンモが答えた。ガンモは私よりもほんの少しプロ野球には詳しいが、私と同じように、テレビ中継などはまったくと言っていいほど観ない。テレビのニュース番組を見ていても、スポーツ情報になると、お互いチャンネルを変えてしまう。当然、スポーツ紙も読まない。本当に、似たもの夫婦だなあと思う。でも、普段、無関心でいるプロ野球に、今夜は救われたのだ。残業することなく帰宅して、早くガンモに会えたのだから。

 人は誰でも、何かしら、熱いものを持っている。その熱いものを、普段の環境で出せるか出せないかは、その人が何を選択しながら生きているかによるのかもしれない。例えば、私は、職場では、それほど熱くはいられない。しかし、ガンモといるときや、ホームページやブログを運営しているときは、とことん熱くいられる。残業をせずに帰宅して行った彼らもきっと、職場では熱くいられない。でも、阪神タイガースに関しては、熱くいられるのだろう。おそらく、彼らにとっての阪神タイガースは、私にとってのガンモやホームページ、ブログの運営と同じで、とことん守り抜きたい対象なのだろう。人は、そんな熱い想いを燃やしながら、それらを糧にして、日々の苦しい仕事をこなしているのかもしれない。だからこそ私は、それら苦しい試練の対比として存在している自分の城であるホームページを守り抜きたい気持ちが強くなるのだと思う。彼らから、阪神タイガースへの想いを取り上げてしまうのと同じで、ホームページの運営までも苦しくなってしまったら、苦しい仕事との対比ではなくなってしまうからだ。おそらく、熱いものを持っている人たちは、そういう形でバランスを取っているのだろうと思う。そして、今回、私が早く帰宅できたように、守り抜きたい熱きものとは、その熱さを選択していない、別の誰かをも幸せにすることがある。

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