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2005.08.10

網走刑務所と博物館網走監獄

 私たちは、北見から石北(せきほく)本線に乗り、網走に着いた。網走と言えば、網走刑務所。私たちは、駅前で借りたレンタサイクルに乗って、網走刑務所へと向かった。網走刑務所は、網走駅からおよそ二キロほどのところにあり、実際に受刑者たちが収容されている現役の刑務所である。受刑者の人権保護のため、受刑者にカメラを向けてはいけないとの看板が、刑務所に向かう橋の手前に立てかけられていた。実際の刑務所というだけあって、外から見ただけでも、厳粛な雰囲気が漂っていた。

 もちろん、刑務所の中に入ることはできないのだが、刑務所のすぐ近くに売店があり、刑務所の中で作られた民芸品などが売られていた。私は、それらを目にしたとき、思わず目頭が熱くなってしまった。民芸品を創る作業が、受刑者の罪の償いに繋がっていることを思うと、彼らがどのような想いでそれらを創り上げたのか、想像してしまったからだ。愛する人たちと離れ、自分の犯した罪を憎みながら、自由を制限されたこの場所で、精魂こめて創り上げたに違いない。おそらく、こうして何かを産み出す作業に真剣に加わった人たちは、出所してからも、仕事に対して積極的な姿勢を示せるのではないだろうか。

 ところで、網走刑務所から更に二キロほど離れたところに、博物館網走監獄という観光地がある。ゆるやかな坂道が続いているため、完全手動のレンタサイクルでそこに行くのはかなりきつかったのだが、私たちは必死に自転車をこいでたどり着いた。ここは、網走刑務所の古い施設を保存しておくために造られた博物館である。実際の網走刑務所で使用していた施設と蝋人形で、網走刑務所がどのような場所であるのかを体験できるようになっている。

 ちょうどお昼どきでお腹が空いていた私たちは、五百円で実際の監獄食を食べさせてくれるという食堂に向かった。麦飯と焼魚を含むおかず三品とお味噌汁の監獄食は、非常に質素な内容ではあったが、焼魚は、丁寧に、そしておいしく焼き上げられていた。

 食堂を出るときに、崔洋一監督の手によって、網走刑務所での様子が、『刑務所の中』という映画になっていたことを知った。いやいや、これは是非とも観ておかなければと思った。というのは、個人的な話で大変恐縮なのだが、崔洋一監督は、私が学生時代、東京の写真店でアルバイトをしていたときに、写真を出しに来てくださっていたお客さんだったのだ。DPEをお預かりするときに、お名前をおうかがいするのだが、崔という漢字が書けなくて、教えていただいたのを覚えている。もちろん、崔監督は、そのようなことがあったことさえ覚えていらっしゃらないだろう。私は、そのときは映画監督だとは知らなかったのだが、あるとき何かのメディアで知り、ひどく驚いたものだった。あれから二十年ほど経って、このような形で崔監督のことを思い出すとは、実に不思議なものである。

 博物館網走監獄では、実際の刑務所の部屋も公開されている。数人を収容できる大部屋もあれば、狭い独房もある。中には、厳しい罰を与えるために特別に用意された部屋もあった。特に印象的だったのは、トイレだった。部屋の隅のほうにトイレがあるのだが、おそらく、こちらは小だけなのだろう。大に関しては、部屋を出たところにある集合トイレで済ませることになっているようだった。そのトイレは、何となくだが、受刑者にはプライバシーさえもないのだろうかという造りになっていた。

 受刑者に対して心が痛んだのは、そればかりではない。資料館に行くと、受刑者たちの過酷な労働によって、網走と旭川を結ぶ北海道中央道路が開拓されて来たことを知る。しかし、栄養不足と過酷な労働が重なり、倒れる人たちが増え、およそ二百人もの死者を出してしまったらしい。しかも、作業の途中で亡くなった受刑者たちを、そのまま土葬していた時代もあったという。土葬された土の中には、服役中に逃亡しないように取り付けられていた鎖や鉄球も一緒に埋められていたとかで、亡くなっても鎖から離れられないと言われていたそうだ。

 この博物館は、それらの事実を受け止め、人々が反省するきっかけを与えているのだと思った。長崎や広島の原爆資料館にしてもそうだ。過去に起こった悲惨な出来事を、もう二度と繰り返すことのないように、人々の心に深く焼き付けようとしているのだと思う。

 ここで見たような内容は、すべて、闇の世界の出来事だ。これらは普段、私たちの目に触れないところに隠されてしまうことで、世の中が成り立っている。これらの闇の世界を見せられると、私たちが普段、いかに、光の世界だけを素晴らしいと思い込んでいるかがわかる。しかし、この闇の世界は、夏休みとは言え、平日であるというのに、たくさんの観光客で賑わっていた。それだけ、闇の世界を見たがっている人が多いということだ。

 現実の世界にも、闇の世界はたくさんある。それらから目を背けないように生きることを、私はここで教えられたような気がする。

今日撮影した写真:網走刑務所と博物館網走監獄

※掲示板にたくさんのコメントをいただいているのに、なかなか返信できなくて申し訳ありません。それでも、皆さんの書き込みを、大変ありがたく、そして楽しく拝見しています。そろそろ私たちの旅も終わりです。11日の夜に関西に帰ります。落ち着いたら、返信させていただきます。

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