ライバル意識
今日は、ガンモの顧客の会社がある最寄駅で待ち合わせをして、ガンモと数年ぶりに飲みに行った。珍しく、ガンモのほうから、
「今日は飲みに行こうか」
と誘って来たのだ。結婚9周年の後夜祭のつもりらしい。
ガンモは普段、お酒もビールもほとんど飲まないので、外食となると、私だけがビールを注文することも多い。私は、晩御飯を外で食べるとなると、お酒が入るのは当たり前だと思っていたので、ガンモとの短かった恋愛時代(付き合い始めてからすぐに結婚したため)、アルコール抜きの晩御飯を食べるということが、妙に新鮮な気がしていた。ガンモがほとんどお酒を飲まないので、二人で居酒屋に行くなんてことは、これまで数えるほどしか経験がなかったのである。
金曜日の夜だったが、仕事を終えた後で少し遅かったので、何とか席をキープできた。私たちは、ビールで乾杯し、結婚9周年を再びお祝いした。初めて足を運んだお店だったが、料理もおいしい上に、お手頃価格だったため、私たちは料理をたくさん注文し、パクパク食べた。
飲みに行くと、お酒を飲まない人は、実に良く食べる。ガンモも例外ではない。また、私は良く食べて良く飲む。ガンモが良く食べるので、私の分の料理がなくなってしまわないかと心配になり、私もムキになって食べてしまう。良く食べる二人がたくさん料理を注文して、すぐにおなかいっぱいになってしまった。居酒屋に入ってから出るまで、ずっと食べ通しだった。
食べてばっかりだったので、ビールのおかわりも注文できなかった私は、
「何か違う!」
とガンモに言った。しかも、職場の人たちと飲みに行くと、たいてい、誰かが何かを熱く語り始める。仕事の愚痴や職場の噂話が多いからだ。しかし、私たちには愚痴がない上に、食い意地が張っていて、飲むことよりも、とにかく食べることに専念していた。
「違うって、何が?」
とガンモが言うので、
「だって、私たち、さっきから食べてばっかりじゃん」
と私。
「そう言えば、何か愚痴でもないの? 仕事が辛いとかさ」
と尋ねるガンモに、
「ない!」
と私は答えた。ガンモはカラカラと笑った。
「とにかく、何か違う!」
と私は繰り返した。
料理を食べ過ぎておなかいっぱいになり、そろそろ店を出ようかという頃になって、ガンモは自分の飲みかけの温くなったビールの入ったコップを私に差し出した。残すのはもったいないので、私に飲んで欲しいらしい。
「何か違う!」
と言いながら、私はガンモの残した温いビールを飲み干した。ガンモは、
「居酒屋、気に入った。また来るから」
と言った。ちょっとしたレストランに入ってご飯を食べるのと同じくらいの値段で、おなかいっぱいになれることがわかったからだ。しかし、私は、もうちょっとビールが飲みたかった。食べる量を減らせば、もっとビールを飲めたのかもしれないが、ガンモがライバルだと、ついつい食べてしまう。食べることに関して、私がライバル意識を持ってしまうのだから、飲むことに関して、ガンモもライバル意識を持ってくれたら、もっと面白い展開になっただろう。
果たしてこの次は、ガンモとどんな勝負が展開されるのだろう。ガンモのペースに巻かれずに、マイペースでビールを飲みたい。ガンモのペースに巻かれてしまったので、今回の勝負は、ガンモの勝ち。
| 固定リンク




