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2005.05.22

ガンモの気ぜわしい顔

 今日は、ガンモの緊急呼び出し担当の日だった。コールセンタからの連絡もなく、何ごともなく一日が終わりかけた午後十時頃、ガンモが持ち歩いている会社の携帯電話が鳴った。その途端、ガンモは急にモードが切り替わったかのように、気ぜわしい顔つきになった。

 「ねえ、これからどこかに行くことになるの?」
と私が訪ねると、ガンモは余裕のない様子でパシャパシャとパソコンのキーボードを叩き、会社のオンラインシステムに接続しようとしていた。
「ごめん。ちょっと黙ってて。これから出掛けて、三、四時間はかかる仕事かもしれないんだよ」
と厳しい口調でガンモに言われ、私はシュンとしてしまった。

 ガンモは、仕事となると、急に顔つきが険しくなる。これから車で出掛けて、夜中まで作業し、それから再び自分の車で帰宅しなければならない可能性があるからだ。コールセンタから電話が入ったときは、いつもその瀬戸際に立たされることになる。

 私は、このとき初めて、コンピュータ業界なんて因果な商売だと思った。そして、いっそのこと、二人でこの業界からきれいさっぱり足を洗ったらどうなるだろうなどと考えてみた。しかし、私たちが辞めたところで、私たちの仕事を他の誰かが代わりに請け負うだけだと思い、そんな状況を想像しただけで耐えられなくなってしまった。私たちがイヤだと思っている仕事を他の誰かに押し付けるわけにはいかない。今、目の前にある課題は、常に私たちの課題だ。そう思ったのだ。

 ガンモは、会社のオンラインシステムで、明日休みを取っている人を探していたらしい。ガンモは明日、朝から仕事が入っていたため、夜中の作業ともなると、体力的に厳しいからだ。ガンモの職場は、持ちつ持たれつの関係が出来上がっていて、お互いのスケジュールをカバーし合うような調整が取れている。だから、夜に呼び出しが掛かったときは、次の日に休みを取っている人に作業をお願いすることもあるのだ。

 しかし、休みの人がいなかったので、ガンモは自分が出掛けて行こうと覚悟を決めたようだった。

 私は、これからガンモが出掛けなくても済みますようにと祈った。夜、こんな気持ちのまま出掛けて、睡眠不足のまま車を運転する危険を考えると、どうしても祈らずにはいられない。しかし、あまりにも自分本位な祈りである場合、この祈りは通用しない場合もある。しかし、今回は通じたのか、電話対応しているガンモの様子が次第に落ち着いて来るのがわかった。ガンモは電話でいろいろな人とやりとりをしていたが、ついには出掛けなくて良くなったらしい。私の想いが通じたのだ。

 出掛けなくても良くなったガンモは、私に黙ってているように制したことをちょっぴり後悔しているような素振りを見せた。そして、すっかり普段の様子に戻り、
「髪を切ってくれ」
と私にせがんで来た。そろそろ髪が伸びて来て、邪魔になっていたのだ。だから私は、お風呂に入るときに、再びサービス満点の床屋さんに変身したのだった。

※お知らせ
5月25日(水)、モデム入れ替えにより、私たちの自宅サーバ(ガンまる.com)が一時的に停止します。一日中、停止するわけではありませんが、ホームページは参照できていても、掲示板などに書き込みをしてくださる場合は、送信のタイミングでサーバが停止する可能性がありますので、お手持ちのパソコンに、掲示板に書き込む内容を保存しておくなどの注意を払ってくださると助かります。特に、精神世界のはなしにアクセスしてくださっている皆さんは、十分ご注意ください。

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