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2005.05.13

目の深さ

 帰りが遅くなると、電車の中は、酔っ払いが多くなる。仕事帰りに乗った電車に、仕事がらみの飲み会帰りと思われる三人組がいた。四〇代後半から五〇代の男性二人と、三〇代後半と思われる女性一人だった。男性の一人が女性の手をしっかりと握り、女性に向けて顔をすり寄せるなどして、しきりにアプローチしているのを、もう一人の男性が見守っている。女性のほうは、男性からのアプローチを、それほど好ましく思ってはいない様子だったが、たいして逆らいもせず、受身の姿勢を取っていた。まったく面識のない私から見ても、彼らが恋人同士でも夫婦でもないことは、すぐにわかった。私は、見ていてとてもいやあな気分になってしまった。

 もしも彼らの間に愛があれば、もっと優しい目でお互い見つめ合うことだろう。更に、決して強引なアプローチではなく、相手の自由意思を尊重した接し方になるはずだ。しかし、男性の態度はとにかく強引で、女性を、自分の身体にぴったりくっつけるように引き寄せたりしていた。こうした態度からも、二人が本当に愛し合う関係でないことがわかる。愛し合う関係ならば、二人がともに歩み寄るものである。自分のいる場所を一歩も動かず、相手を自分のところに力づくで引き寄せようとするのは、自分は決して変わらず、相手にだけ変われと言っているようなものだ。

 私は、女性の態度にも問題があると思った。男性からの強引なアプローチをあからさまに拒絶しない彼女は、私から見ると、あたかも男性からのアプローチを受け入れているかのように見えた。もしかすると男性は、会社のお偉いさんだったのかもしれない。いや、例えそうだとしても、私なら、愛を汚さないように守るため、正々堂々と立ち向かうことだろう。愛を曇らせるような行為に関してはビシっと言うし、その前に、男性にそんな態度を取らせるような隙を作らない。少なくとも、その女性の取っている態度は、「いやよいやよもいいのうち」の部類に入っていたのではないかと思う。

 私のほうが先に電車を降りたので、彼らの行く末は知らない。しかし、あの男性は、何食わぬ顔で自宅に帰って行くのだろうか。酔いが覚めたとき、彼らの間に芽生えるものは何なのだろうか。

 私は、大切なのは目の深さだと思った。目を見れば、その人がこれまでどんな生き方をし、何を考えているのかがだいたいわかる。目は特に、愛の深さを映し出す。いくら歳を重ねていたとしても、目が浅い人には魅力を感じない。

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