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2005.03.02

熱く生きる

 派遣仲間と飲みに行った。彼女は私と同じように、開発を担当している。私の派遣先では、同じ派遣会社からおよそ十人の派遣社員が働いているが、開発を担当しているのは彼女と私だけである。彼女は私よりも二つ年下で、私と同じように結婚している。彼女は現在の時給に不満があるらしく、派遣先と交渉を重ね、何とか今の時給よりも二百円上げてくれるように頑張っているらしい。

 もともと、彼女の時給は、今よりも五百円低い設定だった。それを、交渉に交渉を重ねて、現在の時給にまで持ち込んだらしい。派遣先は、五百円も上げたのだから、これ以上、時給を上げることはできないと言っていると言う。しかし彼女は、他の求人情報と比較し、自分の実力であればもう少しもらえるはずだと主張する。私は、彼女よりも高い時給をもらっているが、今後、時給を上げて欲しいと交渉するのに、そこまで戦う気にはなれない。実際、彼女は、何をどうすれば時給を上げてもらえるのか、部長と面談までしている。その結果、時給を上げてもらえないなら、今の職場を離れる覚悟が既にあると言う。自分の評価に対する彼女の詰め寄り方に、私はただ目を見張るばかりであった。

 彼女とは、仕事のはなしばかりでなく、恋愛のはなしもした。彼女は私の生き方をある程度知っているので、私に軽蔑されそうだと言いながら、過去の様々な恋愛について語ってくれた。驚いたことに、彼女はこれまで、男性から告白されるばかりで、自分から先に好きになって告白したことはないのだと言う。
「じゃあ、片思いの辛さとか知らないんだ」
と尋ねると、
「うん」
と言う。
「告白されて、それほど好きじゃなくても付き合うの?」
と尋ねると、
「だって、付き合ってみないと、好きになれるかどうかわからないでしょ。もちろん、最初から、ある程度好きじゃないと付き合えないけどね」
と言う。私は、目を丸くした。
「じゃあ、お試し期間みたいなのがあるんだ」
「うん、そうだね」
「お試し期間が終了して、やっぱりダメでした、好きになれませんでしたってのはないの?」
と尋ねると、
「最初から少しは好きだから、それはないかな。付き合って行くうちに、だんだん好きになって行くのよ」
「へええええ、そうなんだあ。私は、最初から直感的に好きかどうかを判断するから、自分が近づいて欲しくないなあと思っている人は、なるべく寄せ付けないね」
と私が言うと、彼女は、
「相手を最初から直感的に好きかどうかなんて判断できないよ」
と言う。しかも、驚いたことに、かつての恋人に対しても、まだ好きという想いが残っていると彼女は言う。私は、
「過去の恋愛は過去の恋愛で、別れたらもうあとには何も残らないけどなあ」
と答えた。今度は彼女が驚いていた。
「結構、すぱっと割り切れるのね」
と彼女が言うので、
「ただし、前世で深く愛した人たちのことは、今でも覚えているけどね」
と付け加えると、彼女はとても驚いていた。私は、現世でお付き合いのあった男性たちとは、魂としての関わりがまだ浅いために、すぐに忘れられるのだと説明した。しかし、前世で深く愛した人たちとは、既に魂としての関わりを持っているので、男女の関係にはならず、友達なのだと話した。
「そういうことを、旦那さんも知ってるの?」
と彼女が尋ねるので、
「もちろん」
と答えた。

 それからほんの少し、前世のはなしをした。
「私たちが生きている目的は、誰かを特別深く愛し、愛の記憶を魂に刻んで行くことなんじゃないのかな」
と私が言うと、彼女は、
「ほお」
と言いながら聞き入ってはくれたが、彼女にとって、その手のはなしは少々難しいようだった。

 彼女は自分の評価に対して熱く生きようとし、私は、徹底的に男女の愛に関して熱く生きようとしている。みんなそれぞれに、何か熱いものを持って生きているのだなあと実感した。

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