午前様帰り
ゆうべはプロジェクトの忘年会のため、三宮で夜遅くまで飲んだ。飲み会の席でも、私は愛のはなしがしたくてたまらず、近くに座っている独身男性に、
「彼女はいますか?」
と尋ねてみた。彼は理系の国立大学院卒なのだが、見るからにまじめなお堅いタイプだ。返事は、
「いません」
だった。学生時代も彼女はいなかったらしく、話の雰囲気からすると、これまで一度も女性と付き合ったことがないようだった。挙句の果てには、
「そういうことに興味が涌かないんです」
などと言われてしまった。
私の参加しているプロジェクトには、頭はとても切れるが、いわゆる、奥手な人が多い。だから、私の振る愛のはなしがいつも不発に終わってしまう。私の頭は、数学的な計算やロジカルな考え方に対して閉じてしまっているために、仕事上では彼らからの多大な協力を得ている。つまり、彼らと私は開いている部分が異なっているために、密になり切れないのだ。
同じプロジェクトのメンバーに、近々パパになる男性がいて、生まれて来るのは男の子か女の子かという話で盛り上がった。私は、「男の子のオーラを感じる」と断言した。しかし、私の隣に座っていた部長は、「絶対に女だ」と言い張った。部長と私は、プロジェクトメンバーの前で掛けをした。その掛けとは、私が勝ったら(つまり、生まれて来る赤ちゃんが男の子だったら)、私が職場でしばらく部長席に座れるというものだ。派遣社員の私が部長席に座れるのだから、大変名誉なことだ。私が負けたときの約束はしなかったが、部長をしばらく私の席に座らせてあげてもいい。(笑)
愛のはなしはできなかったが、そんなバカ話で盛り上がり、いつの間にか終電の時間を過ぎてしまっていた。直属の上司と部長と私の三人が、帰る方向が同じだったので、タクシーに同乗して帰ることになった。今、仕事では様々なトラブルを抱えている私たちだが、タクシーの中で、部長は、最終的には人対人のやりとりなんだと言っていた。その通りだと私も思った。
話に夢中になっていたため、帰りが遅くなることをガンモに連絡しそびれてしまった。話を中断し、自分の世界を作り出してしまうことが申し訳ないように思われたのだ。部長が先にタクシーを降りたあと、携帯電話の着信履歴を見ようとして携帯電話を取り出すと、携帯電話の電源が切れていた。私の携帯電話は、午前7時30分に自動的に電源が入り、午前1時になると自動的に電源が切れる設定にしている。手動で電源を入れて着信履歴を確認すると、ガンモからの着信履歴が残っていた。ガンモはきっと、私の帰りが遅いことを心配しているのだと思うと、何だか熱いものがこみあげて来たが、自宅まであと少しだったので、静かなタクシーの中でわざわざ電話をかけなかった。
自宅に着いて、家の中に入ると、寝室から明かりが漏れていた。時刻は、午前1時半を回ったところだった。ガンモは布団に入り、本を読みながら、私を静かに待っていてくれた。ガンモの手元には、携帯電話が転がっていた。その姿に、私に対するガンモの熱い信頼を強く感じて、私はしっぽを振りながら、ガンモに顔を思い切りすり寄せた。ガンモ、愛している。待っていてくれて、本当にありがとう。
朝、目覚めたときも、ガンモが隣にいてくれるのがとてもうれしかった。午前様帰りの私は、この上のない幸せを感じていた。
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