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2004.07.02

鯛の額

 誰にでも、言い間違いというのは良くあることだ。今回は、私たち夫婦の数少ない喧嘩の最中に起こった言い間違いのはなしである。

 ずいぶん前のことなので、その喧嘩の原因が一体何だったのか、もうすっかり忘れてしまった。私は喧嘩の最中はやたらと凸になる癖があり、言葉を矢継ぎ早に発して行かないと気が済まない。その結果、頭の回転が、喧嘩の状況に追い付けなくなってしまうことがある。

 そのとき私は、ガンモに向かって、
「鯛の額!」
と言った。場所が狭いことの例えとして、猫の額などと言うが、その言葉が私の頭の中にあったのは間違いない。私はガンモに、「そんなことを受け入れられないなんて、器が小さい」と言いたかった。しかし、私の口から咄嗟に出て来た言葉は、「鯛の額」だった。

 「鯛の額? 何、それ?」
ガンモがそう言って笑った。私も自分の発した言葉がおかしくなって、さっきまで怒っていた顔が急にほころんで、笑い顔になった。喧嘩の最中だったのに、二人で笑った。私の言い間違いは私たちに、もっともおもしろおかしい形で仲直りのきっかけを与えてくれたのだった。

 それ以来、「ガンモは鯛の額だから」などという冗談が、私たちの間で流行ったことは言うまでもない。

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